世界のセレブが絶賛する「美食のバスク」!?

「バスク」はスペインとフランスの国境地帯にまたがるエリアで、マドリードからみれば北西、パリからみれば南西に位置する海沿いのエリアです。

もともと「バスク語を話すバスク人」の居住地域で、のんびりした田園風景の拡がるエリアでしたが、一時は過激な独立運動(てか、テロ)が起こり、旅行先として注目されることはありませんでした。

私はこのエリアに20代の頃、バックパッカーとして迷い込んだこともあるのですが、テロ警戒のためロッカーや荷物預かりがまったく見つからず、めっちゃ困った記憶があります。

それが、10年くらいまえからでしょうか、

独立運動が治まり、脱工業にも成功し、「美食とアート」が売りの「世界のセレブが絶賛するエリア!」として注目されるようになったんです。

が、

「ほんまかいな!?」

バスクといえばテロ、というイメージしかなかった私には半信半疑。

加えてそこまでグルメでもなく、最近はとくに量が食べられない私にとって旅行先としての優先順位はあまり高くなかったのですが、

たまたま「ぜひバスクに行きたい!」という旅友が見つかったので、

「どんだけ変ったのか、いっちょ観に行ってみるか」ということで出かけてきました。

以下、そのご報告です。

★★★

まず美食について。

たしかに、いくつか(ミシュランの星がついてるような)ハイレベルのレストランが存在しています。

こちらは熟成肉のステーキ

ただし、上記は「一緒に頼んだサラダを取り分けて、私がもりつけたお皿」です。

お店からは下記のような形でサーブされます。上記のような形では出てきませんので、念のため。


バル巡りも人気で、日本でいうところの「スペインバルのタパス」、向こうでは「ピンチョス」と呼ばれるおつまみを食べ歩けます。

上はフォアグラ、下はタコ。海が近いので海の幸もおいしい。

ただしホテルが「このバルでは、これが名物」みたいなリストを配るので、観光客はみな「同じバルで同じモノを注文する」という「食べ歩きオリエンテーリング」をやってる感はあります。

定番の生ハム

ちなみに有名なイベリコ豚は吊されて売られてます。

こちらはバカ売れの「バスク諷チーズケーキ」
シフォンケーキみたいにふわふわでおいしかった!

現地のガイドさんによれば、もともと「バスク諷チーズケーキ」なんてものはなく、たまたまこのお店のチーズケーキがおいしいと評判になり、それを「バスク諷チーズケーキ」と呼び始めたら、めっちゃ人気がでたという経緯らしい。

ブランディングって大事やね。

★★★

あと、なにげにめっちゃおいしかったのがホテルの朝食ビュッフェ。


スイーツでは、ガトーバスクという伝統焼き菓子がとても美味。

チョコレートやマカロンのおいしそうなお店も多いですね。


そして今回、9日間の旅で最もおいしかったのは、アイノアというフランスエリア(フレンチバスク)で頂いたオーベルジュのディナー


メインはハトをチョイス↓ これはかなりレベル高かったです。

デザートの盛り付けも素敵


ちなみに今回訪れたタイミングでは、実質的なユーロ円のレートは160円超え。

歴史的な円安(ユーロ高)だったのですが、パリなどと違い、地方都市であるバスク、とくに、スペインエリアはもともとの物価が安く、「めっちゃ高い」というより、「かなりお得よね」って感じのお値段でした。

今ヨーロッパにいくなら、地方都市が狙い目かもと思います。

★★★

さて、

というわけで、確かにおいしいお店はたくさんあるんですけど、向き不向きのあるエリアでもあります。

まず、1週間つづけて、毎日あちこちで美食を続けるには、かなり丈夫な胃腸が必要です。

マドリードやパリ在住の人なら、週末に訪れて一晩だけおいしいお食事を楽しむ、みたいなことができますが、

日本から行ったら、「1週間、毎日、星付きレストランでフルコース!」「今日も明日もバル巡り!」みたいなスケジュールになりがち。

でもさ。

日本にいるときに、毎日連チャンでそんなコトしないでしょ。

とくに、私みたいに「お茶漬けが大好き」「日本では牛肉なんてほとんど食べない」みたいな人には、ちょっとつらいかも。

なのでそーゆー人の場合はバスクの街だけを連続して巡るのではなく、「パリに行くんだけど、一泊二日でバスクまで足を伸ばす」とか「マドリードにいくときに、二日ほど寄る」みたいな訪れ方がお勧めかもです。

★★★

また、バル巡りは雰囲気はとても楽しいですが、ぶっちゃけ「立ち飲み」です。

私は日本では、ほとんど「立ち飲み」なんて行かないんだよね。

でも外国人(特に欧米人?)って、渋谷とか六本木でも、立ち飲みのバーにめっちゃ集まってるでしょ。

で、知らないお客さんと気軽にいろいろ話したりするのが大好き。

ああいうのが好きな人にはいいですが、「立ち飲みなんて疲れる」「座ってゆっくり食べないと、いくらおいしくても落ち着かない」みたいな人にも向いてない。

現地のガイドさんも「おいしいお店だけなら、マドリードのほうが多い。しかも、マドリードなら、次々と新しいお店ができる。

バスクは、おいしいと評判のお店が少数で固定的。だからリピートの楽しみはマドリードに及ばない」とおっしゃってました。

たしかにバスクの名店といわれる人気店は、一ヶ月前でも予約がとれないような状況だったりするんですけど、

それも「大都市の一流レストランに匹敵するようなレベルの店は、限られた数しか存在しない」から、余計に予約がとりにくくなってるんだろうと思います。


というわけで、たしかに美食のエリアではあるのですが、

万人に向いてるわけでもないし、

同じレベルのレストランの数で比べれば、パリやマドリード、さらにはニューヨークや東京の方がよほど充実してるでしょう。

そういう意味では、やや「マーケティング先行型」の評判ですかね。


それと、ここからは下記の注意書きを見て「大丈夫な方」だけ読んでほしいのですが、

<注意> 以下の方は、決してこの先は読まないでください!

・食事中の方
・美食のバスク地方に憧れを抱いており、行く前に幻滅したくない方


パリではすっかり見なくなった「犬のうんちの放置」もバスクでは、まだまだ一般的だし、

出たてホヤホヤ


いろんな(不幸な)人たちが踏んでいった後・・・

ゴミも汚いし、

落書きもひどい。


たしかに「美食とアートの街」ではあるし、田舎の小さな村はとてもかわいい雰囲気だし、田園風景にもココロ癒やされる。

けど街のそこかしこには、目を背けたくなる景色もたくさんありました。

★★★

とはいえ、「イチ旅行者」として振り返れば、バスクは素敵なエリアでした。

おいしいお店、かわいい街並み、素敵なアート、ワチャワチャ感の楽しいスペインバル巡り! を堪能した9日間。

「行ってよかった!」「楽しかった!」と言える旅行であったことは確かです。

んが、

「バスクめっちゃ楽しかった! おいしかった!」みたいなブログを書いても、あんま価値ないっしょ。

そんなん旅行会社のサイトか、旅行ガイドブックを買えば「これでもか!」ってくらい書いてある。

「実際に行ってみて、ちきりんは何を感じ、何を考えたのか?」を書かないと、発信する価値がないんだよね。

というわけで、若干辛口のレビューに見えるかもしれませんが、全体としてとても楽しい旅行であったことも、追記しておきたいと思います。


以上、「世界のセレブが絶賛してる!」といわれるバスクエリアを視察(?)してきましたので、ご報告まで。

あと、いつものように美術館を巡ってのアート鑑賞もぞんぶんに楽しんだのですが、あまりに長くなったのでそれはまた別エントリで。


そんじゃーね

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/