さらば、日本のプロ野球!!

松坂選手のレッドソックス入り、決まりましたね。
それにしても、交渉のためのお金と6年契約の年俸を合わせて、球団側が彼を6年間雇うために払うと決めたお金の総額が、


120億円。。。。  すっご〜!!!


って、「いったい何がすごいのか?」


つまり言いたいのは、松坂がすごいわけではない、ってこと。いや、彼もすごいけど。この際、一番すごいのは松坂ではない。じゃあ、レッドソックスか、って? それも、まあそうだが答えはそれでもない。

「大リーグってすごいな」ってのが、まあ50点くらいの回答だと思う。どんなすごい選手にだって、今これだけの金額を払える球団は日本には無いですよ。

巨人って120億円、誰かに払えますかね、アメリカから超大物がやってくる、って言ったら払えるか?ちょっと払えないと思う。たかが読売新聞の販促にそんな払えないでしょ?

この彼我の差はちょっと“ガックシ”だと思う。日本の球界関係者にとって・・・


もう一歩進めて言えば「すごいのは、アメリカのエンターテイメント産業」だと思う。

日本の球界が束になっても払えない額を、米国では一球団がポンと払えてしまう。これはもう「産業規模が違う」わけです。

これと全く同じ構造が、他のところにもあります。たとえば映画産業です。ハリウッド映画の制作費は、日本の映画の製作費とはケタが違う。それだけ違う額の投資をしたら、そりゃーいい映画、もとい、売れる映画も作れるだろうし、新しい才能に賭けてみることもできる。

映画産業も、野球などのスポーツ産業も、あわせて「エンターテイメント産業」と呼称されるわけですが、この産業は、IT産業と並び「アメリカ企業が世界市場を独占している」産業だ。


昨日は、日本のプロ野球界が「崩壊した日」だったと思う。

多くの関係者が、昨日は、諦め、嘆息し、打ちのめされたと思う。これでもう、日本のプロ野球界は、明確に「大リーグのための選手養成リーグ」になりさがった。WBCで日本が優勝し、ほんのちょっとだけ「日米の野球」が並列になったような錯覚をすることができた。でも、その夢は、本当に夢にすぎなかったのだと、昨日は大方の人が断念せざるを得なかったと思う。

WBCでは勝てても、すなわち野球という“スポーツ”では、勝てることもあるけど、「エンタメ産業としては、もう絶対に追いつけません」と。そういう烙印が押されたのだ。


なぜ、こんなことになってしまったのか。

今年の桑田や清原を見ていると、「日本のプロ野球界がすべて」だった最後の世代が球界から去っていこうとしているなあ、という気がした。

このふたりは、どちらも巨人に入りたかったんだよね。桑田は友人を裏切り(?)、清原は18で涙にくれた。ふたりの夢は同じだった。「いつか巨人でプレーしたい!」は、小さい頃から日本の野球小僧全員が持っていた夢だった。

でも今から野球界に入るルーキーはもちろん、現在ピークの選手達も、その多くが「いつか大リーグに行くことが目標である」と考え始めるだろう。「今いる場所は、修行の場に過ぎない。大リーグに行くための力を付ける場にすぎない。」と。

昨日の松坂の満面の笑みが、日本中の野球小僧の脳裏に刻まれたことだろう。あのニコニコした、ふくよかな笑顔が、日本中の夢見る少年達に強烈に植え付けたメッセージ。「“ここが”ゴールだ」と。

「世界に認められ60億円稼ぐ男」それが「目標」だ。「いつか巨人でプレーする!」のは、もはや夢でもなんでもない。しかも「できる」人は「大リーグ」に。「大リーグでは通用しない人は、日本にずっといる」という構図ができあがる。

最近は、高校を卒業した段階でアメリカのマイナーリーグに行こうという人もでてきている。最初から本場で勝負しようと。日本のプロ野球界を経る必要はないだろ、と。

★★★

なんでこんなことになっちゃったのよ、日本の野球界?

ひとえに「野球がビジネスだってことが、エンターテイメント産業だってことが、わかってなかったから」だと思う。っつーか、今でもわかってない可能性があるんだが。

「野球はスポーツだ」としか考えないから、「試合がおもしろければよい」と思っている。「ファンがたくさんいたらいい」と思っている。「ドームがいっぱいになればいい」と思っている。


もう一回考えてみるべきだ。アメリカでは「なぜ」ひとりの選手に120億円も払えるのか?と。

常識的に考えて、松阪の入団で、120億円分のチケットが(つまり一年で20億円分のチケットが)いままでより多く売れたりはしないだろう。

ちょっと計算してみます?松坂が登板するのは年に40回程度でしょ。割ると一試合5000万円。2000円のチケットとして25000枚分。球場の定員が5万人とすると、松坂じゃなければ「半分の入り」なのに「松坂だと満員になる」ことが必要だ。こんなのありえないでしょ。つまりチケット代では説明できない額なのですよ。

しかもこの120億円はキャッシュで支払われる額であって、トータルの「松坂コスト」はそんなもんではすまないだろう。


誰が、どこから、何の形で、この120億円を払うのよ?どこから捻出するのだと思いますか?十分に採算があうから、払うわけでしょうが、いったいその収入はどこからくると見込んでいるのか。

もちろん松坂だけではないよね。メキシコからもカナダからも韓国からも、多額の契約金でトップ選手がアメリカに集まっている。

いったい「どこから」このお金が出てきているのでしょうか。

ってことを、日本のプロ野球界も、もう少し前に考えておくことができたら、違う手が打てたのかもしれないね。でも今となってはもう無理だと、昨日「決定した」んだと思う。


ご愁傷様、です。
さよなら、日本のプロ野球界。