ずんずん仮説に挑戦!(どうかな?)

昨日のエントリにいただいた仮説のひとつ、「そもそも男性のほうがたくさん生まれてるのでは?」という仮説にたいして考えて見ましょう。


(1)0歳の男児が女児より6%ほど多い。データは下記。若干のブレはあるけど、だいたい5〜7%くらい男児の方が沢山生まれるもののようです。

http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2007.asp?fname=T04-01.html&title1=%87W%81D%8Fo%90%B6%81E%89%C6%91%B0%8Cv%89%E6&title2=%95%5C%82S%81%7C%82P%81%40%90%AB%95%CA%8Fo%90%B6%90%94%82%A8%82%E6%82%D1%8Fo%90%B6%90%AB%94%E4%81F1872%81%602005%94N


(2)次に乳児死亡率の推移はこちら。(千人中何人というデータ)
http://www.gender.go.jp/whitepaper/h17/danjyo_hp/danjyo/html/zuhyo/fig01_00_12.html

乳児死亡率は大正9年から昭和45年くらいまで急激に下がってます。“公衆衛生”の偉大さを感じるグラフですね。

問題の昭和20年〜30年に生まれた人達は、この乳児死亡率が急激に下がっている期間の後半に該当する。昭和20年あたりだと100人中8人が乳児期に死んでいるが、昭和30年だと5人弱くらい。この10年で3%=3人ほどの乳児が、乳児の時に死ななくてすむようになった。


(3)その3人は男児なのか?

下記のデータを見る限り、乳児死亡率の改善は男女が大人になる比率に影響を与えているようには見えない。“死亡性比”という欄をご覧ください。女児死亡100人にたいして男児死亡が何人か?というデータですが、問題の世代である1945年〜1955年生まれの10年でその比率はほとんど変わっていない。この間ずっと男児は女児より2割くらい死亡数が多い。

ちなみにそれより後になると、男児の死亡性比が120よりもかなり高まっている時期もある。医学の進歩は男女に平等に恩恵を与えており、いや、寧ろ女性により大きなメリットがあった、ということでは?

http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2007.asp?fname=T05-02.html&title1=%87X%81D%8E%80%96S%81E%8E%F5%96%BD&title2=%95%5C%82T%81%7C%82Q++%90%AB%95%CA%93%FB%8E%99%8E%80%96S%90%94%81C%97%A6%82%A8%82%E6%82%D1%90%AB%94%E4%81F1900%81%602005%94N

ということで「乳児死亡率の低下により、男児が女性より多いまま成人する傾向が進んだ」というのは「該当していない」ようす。


(4)本当はそのものずばりのデータ、つまり昭和40年〜60年(1965年〜1985年)の20歳〜30歳の男女比を調べればよいわけだよね。これ、当時の国勢調査にデータがあるはずで、上記の人口問題研究所発行の紙のデータブックには載ってたと思うのですが、ネットでは探せませんでした。

ところで平成18年の性別・年齢別人口をみると、20才の人は男性が7%多く、30才の段階では男性は3%多いだけになってる。これもおもしろいデータですよね・・
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2006np/zuhyou/05k18-01.xls

平成18年の30歳は1976年生まれ、同年の20歳は1986年生まれです。この1976年生まれから1986年生まれまでの10年間では「20歳段階での男性が余り始める」ということが起こっているようにも見える。では、この10年の出生性差と乳児死亡の性差を見てみると・・

出生性差=1976年と1986年では、男女の出生数比率はほとんど変わらない。どちらも106前後。
一方で乳児死亡率の死亡性比=135.5→123.6。つまり、この10年で言えば、男性の乳児死亡率はかなり改善している。

なるほど、この「1976年〜1986年生まれの10年」であれば、「乳児死亡率の改善により、男性が沢山生き残るようになり、20歳時の人口バランスが男性過多に偏っていった10年である」という仮説が成立します。


が、(4)のデータが見つからないと確定的ではないが、上記(1)〜(3)の数字を見る限り、「昭和20年から昭和30年に生まれた世代にかけての10年間で、男性の未婚比率が急上昇した理由は、ずんずん仮説では説明できない」と言えるのでは?


というのが今日の結論。

★★★

なお、今の段階でいくつか感じたことだけメモっておくと。


(1)「“男女とも”に生涯未婚率が上昇していることの理由についての仮説」と、「近年、男性の生涯未婚率が女性よりも高くなっていることの理由についての仮説」は、分けて考えるべきことかな、と思います。


(2)コメントの中には、「経済力をつけた女性が未婚を望んでいるのでは?」「女性がたとえバツイチでも気にせず“いい男”の方を選ぶから男性が余っているのでは?」と、女性側に最初の理由があると考える方も多いようですが、ちきりんはこの点についても懐疑的です。

なぜなら、昨日のグラフは“今の30代の話”ではなく、“今の62歳から52歳の人”の話、なんです。本当に「女性側に最初の理由がある」のかなあ?と思います。

(3)相関と因果関係も分けるのが難しいですよね。「コンビニができ、家電製品が整い、家事が楽になったり、一人で楽しめる娯楽が増えたために、結婚しない人が増えたのか」「結婚しない人が増えたために、コンビニが増え、家電が高機能化しても売れ、一人で楽しめる娯楽が広く受け入れられ普及したのか」は、わかんない。


(4)コンビニとならんで「結婚機能の代替物」として名前のあがる性風俗産業ですが、これは男性の未婚率とは関係ない、と思います。

公娼時代、赤線時代を含め、女性を買える場所は時代を問わず常に存在するし、昔の方が寧ろ「公的」「合法的」であり、かつ、男性がそれを利用することのバリアも心理的、倫理的に今より余程低かったと思います。

そういう過去において98%の人が結婚していたのですから、現在の未婚率の高さを「風俗がある」ということで一部でも説明するのは難しいかな、と思います。



というわけで力尽きてました。残りはまたそのうち!


ではでは〜!