この前シンガポールのチャンギ空港で乗り換える時に、シンガポールエアラインのカウンターで手続きをしたところ、
それが終わって近くのベンチに戻り、荷物を整理しているところに別の係員がやってきて、「アンケートさせてください」っていうわけ。
目的を聞くとて、「さっきのカウンターでのサービスについて、満足度をききたい」と。
で、用事は解決したか? 待ち時間は長すぎなかったか? 対応は迅速だったか? 言葉遣いは適切だったか? 笑顔はあったか? などを 5段階評価しろ、と言う。
ひとつひとつ答えたら「さんきゅー」っていって戻っていきました。
これ、わかります?
シンガポールエアラインが雇っている「覆面調査員」ですよね。
このアンケート調査員は、客がエアラインのカウンターで用事が終わるのを待っていて、その直後にその客のところに駈け寄り「対応はどうだったか?」と聞いてるの。
当然、「誰が対応したか」、つまり、シンガポール航空のカウンターにいた係員の“固有名詞”も調査票に書き込んでいるんでしょう。
そして、「○○××」という係員に対応された顧客 20人にきいた満足度調査表というのができあがる。
あまりに評判の悪い職員は首になるのかもしれないし、そうでなくても、評価に使われたり、トレーニングの設計に使われたりするのでしょう。
「偉いなあ」と思いました。
世界で一番サービスがすばらしい、と言われる航空会社は、こうやってできていくんだなあ、と。
なおあたしはシンガポール航空の 100倍くらいの頻度で成田空港もジャルも使いますが、今までただの一回も覆面調査を受けたことはありません。
★★★
この前、家に電話がありました。衛星劇場というスカパー!経由で視聴している有料チャンネルから。
「番組に対するご意見をいただきたい」と。
スカパー!には山ほどのチャンネルがあるのですが、そのうち 8割以上が「パック料金」で視聴できます。
パック料金というのは「月○千円」払うと、「この 30チャンネル全部が見られます。」みたいになってるやつね。有料チャンネルがパック売りされてるわけです。
なんだけど、中にはこの「パック売り」に入ってない番組がある。
数は多くありません。よほどコンテンツに自信がない限り、単独販売はできないから。
だって 3500円払うと 50チャンネル見られるのに、単独販売されるのは 1チャンネルで 1500円とかなわけだからすごく割高。
一方で番組側の収入という意味では、パック売りではたいした収入にはならないでしょ。単独販売ならそれこそ桁が違う収入が手に入る。
もちろん、単独で視聴契約を獲得するのは並大抵のことではないはず。
ひとつの家がテレビの視聴料金として何万円も払ったりはしないわけだから、相当高い評価をえないと単独では契約してもらえない。
なので単独販売されるのは外国語の番組か(ブラジル人向けのポルトガル語チャンネルとか)、専門番組(経済や医療やスポーツ)などが多く、普通のドラマやバラエティの番組で「単独販売」というのは非常に限定的です。
衛星劇場は、そのひとつ。つまり、数少ない、単独で売られている一般チャンネルなんです。
実は私、この数ヶ月、衛星劇場の視聴をとめていました。出張が多かったのでたまたまなんだけど。
そしたら電話がかかってきたわけ。
そして「なんで視聴をやめたのか?」「その理由は価格なのか、コンテンツなのか」「コンテンツだとしたら何が見たいのか」等々と決まれました。
ここで大事なのが、「視聴を再開してくれ」といった営業が一切なかったこと。
つまり電話してきたのは、「よりよいチャンネルを作るために、何をすればいいか調査をする担当者」であって、営業マンだったり、営業目的で雇われたテレホンアポインターじゃないってことなの。
単独で自分を売れる番組ってのは、そういう努力をしてるんだなとわかってすごく感動した。
やっぱりね。売れているもの、高い評価を得てる人や企業というのは、ちゃんとまともな努力をしている。
そしてそのまともな努力とは、「顧客から直接フィードバックを得る」ということなんです。
しかもそのために、きちんと経費をかけている。
シンガポールエアも衛星劇用も、顧客からフィードバックを得るために(紙のアンケートではなく)特別な人を雇うという経費をかけている。
コストをかけてでも顧客の声を直接、その場で聞き取る。
買ってもらうために、高い価値を認めてもらうために、必要なのは「営業」ではありません。必要なのは「顧客の声」なんだよね。
そして本気でそう思っているなら、ちゃんとそのために金を使わないと。
あまりに当たり前すぎて、書くのもアホらしいようなことなんだけど、それをやっているところは、やっぱりそれなりの会社ばっかり。
“誰でも知ってる当たり前のこと”でも、結局は皆がやっているわけではない。
実際にやっている人は、当たり前の、どこにでもいる人じゃない。
うちの回線が何の種類になってるかも確認せず、とりあえず爆弾攻撃みたいに何度も光回線の営業電話かけてくるどっかの元電電公社とか、
加入している損害保険の契約の件ですとかいいながら、途中で同じグループの生命保険の営業トークを始めるような詐欺みたいな電話してくる業界一位の損保会社とは、
心構えが全く違う
と思いました。