先日、NHKの不妊治療に関する番組を見ました。そういえばこの問題についてブログに書いたことがなかったので、ちょっくら書いてみます。
ただ、この問題は考えるべきことの領域がとても広いので、今日は「課題出し」のみとし、課題の整理は次回にします。
順番は“思いついた順”で、重要な順でも、カテゴリー別でもありません。また、現時点では必ずしも因果関係が検証されていない課題も含まれます。
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課題1)「一年で何人が不妊治療を受けているのか」、「それは妊娠を望んでいる夫婦の何%にあたるのか」、「不妊の原因とは(男女別比率を含め)何がどの程度なのか?」、「どんな治療が何件行われ、それぞれの年代別成功率はどの程度なのか」など、不妊治療に関する公式なデータが存在しない問題
課題2)不妊治療を受け始める女性の年齢が高くなりつつあり(35歳以上が急増など)、治療の成功率が低下している問題。また、たとえ妊娠しても高齢出産となり、母子ともに様々なリスクが高くなっているという問題
課題3)年齢が高くなると妊娠確率や不妊治療の成功率が下がることについて、知識が普及していないこと (=課題2の原因のひとつ)
課題4)キャリア形成を優先せざるを得ないため、結婚、出産を遅らせ、そのために不妊治療を余儀なくされる女性がいること(正社員女性など)
課題5)産休や育休がとれる立場でもなく、家計のために仕事を優先せざるを得ないために、妊娠を遅らせ、不妊治療を余儀なくされる女性がいること(非正規雇用の女性など)
課題6)男女とも経済的な問題から、結婚、出産を望んでいても、そのタイミングが遅くなってしまう問題
追記メモ)上記4,5,6の他、保育園が見つからない、父親の育児休暇が取れないなど、出産後の育児体制が整えられないことから、出産を躊躇しているうちに高齢となり、不妊問題を発生している問題も。
課題7)大学・大学院への進学率が上がり、男女とも学生である期間が長くなって、「親になる精神的な準備」が、出産に適した 20代の間に整わない問題
課題8)男性の生殖機能と年齢の関係が(女性の生殖機能と年齢の関係に比べて)緩やかであるため、男性側に結婚、出産のタイムリミットを意識する必要性が少ないことが、結果として結婚、妊娠タイミングを遅らせているという問題
課題9)不妊治療に相当額のお金がかかり、保険適用がほとんどないため、事実上、経済力がないと不妊治療が受けられないという問題
課題10)不妊治療にはお金だけでなく、治療のための時間や精神的な余裕も必要で、仕事や生活環境の関係から、不妊治療が受けられない女性がいる問題
課題11)有名人の 40代での出産が大々的に、しかも、「すばらしいこと」ととりあげられ、出産の高年齢化を肯定する風潮に貢献している問題
課題12)不妊に悩む女性がメディアや周囲から、「子供を持つのが女の幸せ」、「子供がいない女性にはわからないだろうが、」などといった、無理解な言動に傷つけられる問題
課題13)婚外子の権利が認められていないことが、出産タイミングを遅らせ、不妊治療を受けざるを得ない女性の増加につながっているという問題
課題14)「女は子供を産んでこそ一人前」といった風潮がプレッシャーとなり、不妊治療がつらくてもやめられない女性がいる(もしくは、個人的には気が進まない不妊治療を受けざるを得ない)問題
課題15)不妊問題、不妊治療問題が話題としてタブー視されており、幅広い層を巻き込んだ議論が行われない語られない問題
課題16)夫婦間の意識や意見の違いから、不妊治療が難しくなる問題
課題17) 不妊治療に関する意見の相違が、夫婦関係に悪影響を与える問題
課題18)(男性由来の不妊も少なくないにも関わらず)不妊が男女共通の問題としてではなく、女性の問題として認識されがちなこと。およびそのために起こる問題
課題19)少子化が日本社会の大問題と言われ担当大臣までいながら、一方で不妊問題が放置されている問題
課題20) 卵子の冷凍保存などを含め、生命科学に関しての倫理について十分に議論されていない、という問題
課題21) どのような場合に実子として戸籍に入れられるか(代理母問題)、どのような子供に相続権があるのか(母親が死んでから冷凍卵子を使って生まれた子供など)の法律的な問題が、技術の進化に追いついていない問題
課題22)海外で認められている不妊治療の手法が、日本では認められていないという問題。ただし、それらが認められた場合、現在、海外で問題になっているように、「学歴が高い人や一流アスリート、容姿がよい人の卵子や精子ばかりが高値で売買される」などの問題もでてきそう。
課題23) 不妊治療を受ける夫婦が増える一方で、欧米ほど養子縁組が進んでいないという問題
これには2面あり、“自分の血を分けた子供”、“お腹を痛める”ことにこだわる個人側の問題と、40歳を超えたらダメとか、女性が働いている夫婦はダメなどの養子縁組のルールが厳しすぎるという問題
課題24)若くして結婚、出産し、離婚や虐待、生活苦による生活保護申請などが起こった時、社会は「親になる資格をもたないのに、無責任に子供を産んでいる」と厳しく糾弾する。
こういった風潮が、若いときに結婚、出産することを思いとどまらせ、不妊問題を大きくしているという問題。“社会的に”出産適齢期とされる期間が短すぎるのではないか?ということかな。
ツイッターでいただいた追加課題)妊娠しようと思うまで、不妊問題に気が付かないという問題。(たとえば、病気なら人間ドックや定期健診で見つけようという話になるが、不妊はそういう扱いはされていない)
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これ興味深い意見ですね。でも多分、意味がないと思います。だって 25才で検査して妊娠機能に問題が見つからなくても、「じゃあ、安心して 35才より後で産めばいい!」とは言えないわけで。加齢と共に妊娠しにくくなるのは、検査で見つけられる病気とは違います。
・・・他にはどんな問題があるのでしょう?
それにしても課題リストだけを作ってもこれだけでてくるのだから、この問題の深刻さ、大きさがうかがえるというものです・・・
そんじゃーね。
追記)この件に関する続きのエントリ(課題の整理エントリ)はこちらをどうぞ