先月、フェースブックとアップルが福利厚生策の一環として、女子社員の卵子凍結費用を最大 2万ドル(約 200万円)まで補助すると発表しました。 卵子凍結だけじゃなく、不妊治療費の補助もあるみたい。
これ、「人材獲得競争が激化している米 IT 業界において、優秀な女性を確保するための施策」的に報道されてるけど、別の見方もできるよね。
アメリカでは元々、
・精子バンクもあれば、
・卵子バンクもあるし
・代理母もアリだし、
・親が育てられない子供を引き取る、養子縁組も日本よりよっぽど身近です。
卵子凍結だって今に始まったわけじゃないけど、その費用を大手企業が福利厚生策で負担するとなると、いよいよ出産に関しても “100% under control” の時代に向かいそう。
たとえば フェースブックやアップルで働いている 30代女性が、
「早めに子供を産まないと不妊リスクが高まってしまう。でも、今は仕事がおもしろい。キャリアを中断したくない。このプロジェクトだけは、なんとかやり遂げたい!」と思った時に、
「今は卵子を凍結しておいて、子供を産むのはもうちょっと後に延ばそうかな? お金は会社が出してくれるし」みたいになりそう。
優秀な女性社員が「妊娠は、大事なプロジェクトが終わってからすればいい」と考え始めれば、人手不足に悩む企業側にとってもメリットがある。
もしかして、だから会社の福利厚生策にするんじゃないの?、的にうがって考えてしまいそうになるほど。
★★★
実際のところ、卵子も凍結できる、精子も凍結できる。どっちも買ってこれる。費用は会社が出してくれる。妊娠と出産は代理母に外注すればいい。子育てはナニーを雇って・・・ってなったら、出産のタイミングは完全にコントロールできる。
そうすれば最初から、20代から40代までは仕事、50代から子供を産み育てる、っていう人生プランをたてる人も出てきそうだし、
もっといえば、今までは「若い頃はバリバリ働いて、定年後は夫婦で海外旅行でもしてゆったりすごそう」と思ってた人が、「バリバリ働いて、出産と子育ては定年後の楽しみにとっておくわ」なんてことにもなりそう。
もしくは、20代で卵子を保存しておき、いろんな人とつきあったり結婚したりした上で、「子供は、父親としてふさわしいと判断できた男性の精子で生むつもり」的に、人生のパートナー(男性)と精子の持ち主(?)を分離して考える人も出てくるかも。
特にこれからは遺伝子チェックで将来の病気の可能性まで判断できるわけだから、「彼のコトは愛しているけど、彼の遺伝子はあんまりよくないの。糖尿病になる可能性が高いのよ。だから、子供は別の人の精子で作るわ」と言い出す人だって、皆無とはいえないでしょ。
「そこまでする?」という声には、
「子供の幸せのためなら、母はなんでもできるのよ!」と答えればいーわけで。
もちろん経済力のある女性なら、「精子は買ってくるモノ」という認識が普通となり、ひとりで子供を持つ人も増えそう。ゲイカップルももちろん皆子持ちになれる。
とはいえ代理母に関しては、卵子保存や精子売買とは全く違う問題も伴うよね。だって体の中で9ヶ月にわたり子供を育てるのは、それなりにリスクのある行為だから。
ホルモンバランスも変わるし、自分が病気になっても飲めない薬や治療法が出てくる。出産行為そのものにもリスクがあるし、流産となれば母体にも大きな影響がでる。
アメリカだと代理母を頼むときには、すんごい分厚い契約書を結ぶわけだけど、その中には、「胎児の障害の有無を定期的にこういう方法でチェックすべし」とか、「何週目までは中絶を受け入れるべし」みたいな条項もあるわけでしょ。
自分のおなかの中に(もしくは、愛する妻のおなかの中に)いる胎児に比べて、会ったこともない(遠く離れた途上国にいる)代理母の場合のほうが、中絶の決断も気軽にできそうじゃない?
もっと言えば、別に胎児に障害がなくても、「やっぱ止めた!」的に中絶を依頼する人だって出てくるかも。
「夫の精子と私の(冷凍保存してた)卵子で受精させて、タイの代理母に出産を頼んだんだけど、夫とは離婚することになったからキャンセルプリーズ」みたいな・・・
「よくそんなコトができるね?」という批判に対しては、
「問題ないわ。相手だって契約を結ぶ段階で、○週まではキャンセルがありうるって理解してるはず」と答えんのかな。
卵子を冷凍保存し、精子は買ってきて、誰かのおなかで育てて産んでもらう。自分は卵子を取り出した後は(それだって、もちろんそれなりに大変だとは思いますけど)、契約書に基づいて指示するだけ。
そういう未来はもうそこまで来てる。
あたし達は一体、どこまで自分の人生をコントロールしようとするんだろう。