16日の衆院選に向けた政策アンケートの結果(その1)を発表します。
→ 応募総数や回答者プロフィールについては前回のエントリーをご覧ください。
今日のテーマは 税と年金 です。
このふたつに関して重要なことは、「負担側の話を避けないこと」です。
たとえば、「消費税に賛成か、反対か」を尋ねるだけではアンケートとして価値がありません。消費税に反対の場合、「では、どこから税を徴収すべきと考えているの?」を明確にしないと、問題先送りにしかならないからです。
また、「行政改革をするか、消費税を上げるか」という選択肢も無意味です。今の日本では、行政改革を含め、支出側の無駄を削減することは必須であって選択肢ではありません。行政改革をすれば増税が不要になるわけでもないのです。
では、ちきりん読者が考える税負担の在り方について、アンケート結果を見ていきましょう。以下は、課税強化すべきと言う意見(賛成の割合)が多い順に並べたものです。
(1) 最も多い66%が賛成したのは、退職金税制の優遇など、大企業や公務員組織に、新卒から定年まで転職せずに勤め続けた人にメリットが大きい優遇税制の廃止です。既に時代遅れとなりつつある特定の働き方に、有利な税制を残すことへの反意が表れているといえます。
(2) 次に58%と賛成が多かったのが、所得税の課税ベースを拡大することです。年収が比較的低い人や、専業主婦や両親、子供を扶養している人にも、もっと税金を払って貰おうという意見ですね。現在は、単身者や共働き家庭に税負担が集中しすぎていると考えている人が多いのでしょう。
(3) 次が消費税で56%が賛成しています。ちきりん読者は「広く多くの人達で税負担を分け合うべき」と考えていることがよくわかります。
(5) 資産課税についても47%が賛成しています。ストックに課税するという思い切った案であり、非資本主義的な税金であるにもかかわらず賛成者が多いのは、資産をため込んでいるのは高齢者であり、アンケートの回答者とは世代格差があるからかもしれません。
(6) そして最後に衝撃的な結果がでました。法人税のアップに関しては、66%が反対しているのです。今回の案の中で、増税反対が5割を超えたのは法人税のみです。賛成は21%しかおらず、消費税、所得税などの増税に賛成する人の半分をさらに下回っています。
ちきりん読者の皆様、思った以上にビジネス寄りですね。実はこのビジネス寄りの視点は、明日以降に公表する他の設問の結果にも、きれいに表れています。
以上が「誰が税負担をすべきか」に関する回答結果です。全体としてみれば、“極めてちきりんブログ読者らしい結果”と言えるでしょう。すなわち、
(1) 企業活動を阻害する法人税の増税には強く反対
(2) 消費税増税や、課税ベースの拡大など、広く薄く税負担する方向に賛成
(3) 大企業で一生働く人、資産をため込んでいる人など、中高年以上にもっと課税すべき
ということのようです。
あと、普通は「増税反対!」の声が強いものなのに、このアンケートに関しては、法人税以外は増税賛成が多数意見となりました。ちきりん読者は、現在の財政状況への危機感が強く、財政再建を急ぐべきだと考えていることがよくわかります。
ここで、支出側に関する回答も見ておきましょう。限られた財源をどこに使うべきかという質問に対して、ちきりん読者の志向は下記に明確に表れています。それは、“福祉より投資、高齢者より若い人にお金を使うべき”という考えです。
特に、高齢者福祉にお金を使うべきという回答は極めて少なく、当ブログ読者である若い回答者から見れば、現行の福祉制度は高齢者を偏重しすぎと見えていることが、よくわかります。
次に年金についての回答結果です。
選択肢の内、最初のふたつが現行制度を維持すべきという方向、真ん中が最低保障年金、最後のふたつが現行制度を支持しない、という方向の選択肢です。
ベーシックインカムや積み立て方式(超長期の国への貯金制度)など、現行制度とは大きく異なる制度を支持する人も、後半ふたつのいずれかに含まれていると思われます。
選択肢の中で一番多いのは、現在の年金制度を廃止すべきという意見です。回答者に若い人が多いことを反映しているのでしょう。このあたりは後で年齢別データを調べてみたいと思います。
また、現行維持方向である最初のふたつの選択肢を比べると、負担を上げて給付を維持する方式より、給付を削減して負担を抑えるべきという意見の方が圧倒的に支持されています。廃止案の賛成者が多いことと合わせ、年金については、拡充ではなく縮小・廃止方向への意向が強いようです。
以上、税と年金に関する部分のアンケート結果でした。明日は、経済政策と雇用政策について発表します!
そんじゃーね