会社員も市場に評価される時代へ

前回は、クラウド・ソーシングが企業の採用プロセスや、社員のスキル&勤怠評価法を変えていくだろうと書きました。

それだけでも十分に衝撃的ですが、この仕組みを利用し始めた企業はそのうち、それがあらゆる人事施策に活用できると気が付きます。


たとえば企業の中には研修の一環として、社員に「クラウド・ソーシング市場で仕事を受注するよう」命じるところもあるとのこと(得られた報酬は個人に入ります)。

市場で直接仕事を受ければ、「自分はいったいいくらの報酬がもらえる人なのか」という事実に、すべての労働者が直面します。

多くの場合、社員は「会社からもらっている給与は、市場から得られる報酬よりかなり多い」ことを身をもって理解することとなり、それ以降は文句を言わず、危機感を持って働くようになるというわけです。


また企業内では(新人はやたらと怒られますが)、勤務年数の長いベテラン社員になると、厳しい指導を受ける機会がほとんどなくなります。

そういう社員(たとえば部長やマネージャー)にも、クラウド・ソーシングで仕事を受けさせれば、市場から遠慮のないフィードバックを受け、(部下を叱り飛ばすだけではなく)自分もまだまだ成長しなくてはならないのだと認識させられます。


さらに、ホワイトカラー職種の社内評価はしばしば、「上司に好かれているかどうか」的なことで決まってしまうと言われますが、定期的にクラウド・ソーシングで仕事を受注させることで、企業は社員評価に使える客観的なデータを手に入れることもできます。

加えて、65歳までの雇用延長がなされ、社内で余ってしまっている労働力を少しでも活用するため、「仕事はクラウド・ソーシング市場を使って自分で受注し、毎月、自分の給与分くらいは稼いでください」と言い出す企業もでてくるかもしれません。


このように、クラウド・ソーシングは、
・社員の採用プロセスとして使える
・社員の業務態度やスキルの評価ツールとして使える
・社員の育成や研修機会として使える。さらに、
・給与と市場価格とのズレの補正のためにも使えて、
・余剰労働力の活用にも使える
と、人事政策のあらゆる面で活用できるのです。


★★★


もうひとつ、衝撃的な数字を挙げておきましょう。

この本によると↓

クラウドソーシングの衝撃 雇用流動化時代の働き方・雇い方革命 (NextPublishing)

クラウドソーシングの衝撃 雇用流動化時代の働き方・雇い方革命 (NextPublishing)

キンドル版はこちら


IBMは、現在、世界中に 40万人いる社員のうち 30万人を、今後、クラウドワーカーに置き換えていこうと計画しているらしい・・・



えっーーーーーーーーーー!




「あーよかった、オレは日本企業に勤めてて」って?


でも・・世界のライバル会社がそうやって大幅にコストを下げてきても、日本企業はそれに追随しなくて済むと思います?

欧米製造業が自社工場を閉鎖し、生産現場を台湾のEMSに移して大幅なコスト減を実現した時、日本企業に勤めている人は、「あーよかった、オレは日本企業に勤めてて」って言ってられましたっけ?


★★★


クラウド・ソーシングを大胆に取り入れようとしている企業には、IBMのほか、P&Gやロシュなど、欧米の一流企業が含まれており、彼らと直接競合する日本企業にとって、この動きは「ふーん、そりゃあすごいね」で済まされるものではありません。

先日、アベノミクス絡みで賃上げの可能性を問われたトヨタ自動車の社長が、「今は賃上げというより、雇用を守るために必死だということを理解してほしい」と言っていました。

トヨタ自動車レベルの競争力があってもそういう状況なのです。



あーあ



というわけで、「企業にとってのクラウド・ソーシングの意味合い」については今回で終了です。次回は個人事業者やフリーランスにとっての意味合いを考えてみましょう。


そんじゃーね!