来年こそ“ダダ漏れ元年”?

ちきりんがビーチで遊んでた間に、とあるタレントさんが元夫と他のタレントさんの不倫についてTwitterでつぶやくという事件がありました。

このツイートをきっかけに、3者それぞれが記者会見を開くことになり、かなりプライベートなことまで話さざるを得なくなったのは見ていてちょっと衝撃でした。


ネット上での情報系トラブルを分類してみると、

(1) 政治的意図をもった作為的な情報リーク
(2) プログラムによる情報流出
(3) 気軽にツイートしたことが拡がって大事件化
(4) 告発型(悪口、悪評判など)
(5) 個人情報突き止め型

あたりでしょうか。


最初のはウィキリークスや尖閣諸島ビデオの流出など。

二番目のは winny やスパイウエアなどのウィルスにより、本人の意図なくして情報が漏れるもの。

三番目は、今回の「夫が○○さんと不倫してた。ショック!!」というツイートや、先日話題になった「一流といわれていたレストランのスタッフが客の悪口をツイートした件」など。

また過去にも、mixiで自分の悪行を自慢げに開示して糾弾された人もありました。つぶやいた人はここまで大事になるとは思ってなかったでしょう。

四番目は企業内の不正行為を内部告発するとか、個人が企業の労働政策について告発する、行ったお店のひどいサービスについてつぶやく、セクハラや詐欺など他者の悪行について告発するなどのパターンです。

このタイプのものとしては、ずっと昔に東芝のお客様サービスへのクレーム事件がありました。最近ではストーカーやセクハラを告発してる個人のツイートもあるようです。


最後のは、あれこれつぶやいたり mixi やブログで書いていることから「総合的に何かが判断される」パターンです。

アメリカの一部業界では、TwitterやFacebook、ブログでの発信内容を採用判断に使うケースがあるといわれますが、そういうものだとか、反対に“統合された情報”によって犯罪の証明も可能になるかもしれません。

本人はあちこちで(他者にわからないように)発信しているつもりでも、誰かがそれらの情報を統合し、人格判断(人物証明)に使える形にまとめあげていく、というイメージです。

特定のレストランや芸能人らの悪評を意図的に(統合すればそういうメッセージが浮かび上がるように)散布していく、ような行為が始まったり、「○○さんの Twitter の発言で名誉を毀損された」と実際に訴える人もでてくるかもしれません。


★★★


で、そういうのと絡んで興味深いのが企業や組織の情報管理ルールです。

たいていの大企業は、新卒入社した人向けに 1ヶ月以上の研修をやっています。ちきりんも最初に日本の会社に入社した時、名刺の渡し方、タクシーや宴席で下っ端(の自分)が座るべき席、お辞儀の仕方、電話の取り方や話し方まで研修で習いました。

そういった研修制度の整った企業においては、ブログやTwitterの使い方、メールの書き方、会社のパソコンの私的使用ルール、USB やサーバーでのデータ管理の方法などについて、今は新人研修で正式に教えているのでしょうか?

たとえば、何はつぶやいてもいいことで、何はつぶやいたらダメなことなのか、何は家に( USBメモリなどで)持ち帰って作業してもよくて、何はダメなのか。メールに絵文字をつけてもいいのか、いけないのか、などなど。

こういうことについて、「統一ルールを設定して教える」ということがなければ、各人は皆自分の常識で判断することになります。その常識が誰でも同じであれば問題はありません。社外秘と赤いはんこが押された企画書の内容をつぶやいてはいけないことくらいは、誰でもわかるでしょう。


けれど、来年あたりに大学を卒業する人と、組織の管理職や長ポジションにいる人たちの、こういうことについての常識はかなり違うんじゃないでしょうか。

すると各人が常識に基づいて判断した結果、「えええええええっーーー!!」みたいな情報が外に漏れる事件はこれからいくらでも起こりえます。


たとえば上に書いた、レストランのスタッフが客の悪口をTwitterでつぶやいた事件。これ、内容が悪口だったから、大半の人は「とんでもないスタッフだ」と思ったことでしょう。

では、もし「ほめ言葉」だったとしたら、それでも「大きな問題だ」と思う人の数は同じでしょうか?たとえば「今日は○○さんが来店された。実物はテレビで見るより圧倒的に美人だった!」というツイートだったらどうだったでしょう。

実際には、「今日誰が店に来たか」を吹聴するスタッフがいるような店は、とても一流とはいえません。

京都の老舗旅館、政治家が使う東京の一流料亭、銀座の一流クラブやレストランなどにおいては、「今日誰が来たか」自体が高度にプライベートな情報であって、内容の良し悪しに関わらずそんな情報を漏らすなんて許されることではありません。

けど、「そう?ほめてるんならいいんじゃないの?街中で○○さんを見た!とつぶやくのと同じでしょ?」と考える人もいるでしょう。このあたり、人によって許容限度がかなり違うと思います。


なので、企業や組織は相当程度、社員教育に気を使わない限り、必ずこれらの問題に遭遇することになるでしょう。

しかも「新人の研修内容」を企画検討している側の人たちが「 Twitter も Facebook も使ったことがない」世代だとすれば、そういったことが研修に含まれるようになるまででさえ、かなり時間がかかりそうです。だからといって「個人でもTwitter禁止」なんて今時できるわけでもありません。

というわけで、来年あたり、異なるネットリタラシー、異なる情報開示許容度を持つグループが混在する組織(特に大組織、大企業)において、「ありゃりゃ」な情報流出が大幅に増えるんじゃないかと、混乱Lover的には心待ちに楽しみにしているちきりんです。


来年もよい年になりますように。


そんじゃーね。