皇位継承に男女平等を持ち込むのは変でしょ

前回のエントリ の続きとして、「下記の本を読んで私=ちきりんが考えたこと」を書いておきます。

今日のテーマは「皇位継承に男女平等論を持ち込むのは論理破綻では?」って話。

知られざる皇室外交 (角川新書)
西川 恵
KADOKAWA (2016-10-10)
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まずは質問から。
皇室の話はいったん忘れ、一般論として考えてみてください。

みなさんは、性別による差別、出自(血統)による差別、人種による差別、外見による差別、などのうち、「性差別だけは許せないが、他は許せる」とか「人種差別は問題ないが、性差別は問題だ」とか思います?


思いませんよね。

性別だろうと血統だろうと人種だろうと、生まれながらにして決まってる(or 自分の努力では変えられない)条件によって権利を制限するのは差別だからダメ! でしょ。

だとすると、「性別による差別はよくないが、出自による差別は問題が無い」って考えは論理が破綻してますよね?

「差別はいかん」というなら、男女差別だけでなく、生まれによる差別も、見かけによる差別もダメなはずなんです。


★★★


ここで話を皇室に戻します。

「女性に皇位継承権がないのはおかしい」と言う人は、「皇位継承に差別があってはならない。平等に継承できるべきだ!」と考えてるんですよね?

だとしたら「血統により皇位継承権に差があるのもダメ」とも考えてますよね?

だって「男性なら天皇になれるけど、女性だと天皇になれない」が差別だというなら、

「天皇の長男として生まれたら自動的に天皇になれるけど、一般人の子として生まれたらどんなに努力しても天皇にはなれない」のも、出自(血統)による差別だもの。


天皇だとわかりにくいというなら他の職業で考えてみてください。

「町長の子供に産まれないと町長になれない」とか「医者の子供に産まれないと医者にはなれない」って言われたら明らかに差別でしょ? 

「女子しか医者になれない」とか「男子しか町長になれない」と同様、とんでもない差別ですよね?

でも天皇は天皇の子に生まれないとなれないんですよ。

だからたとえ女性が天皇になれるように法律が変わったとしても、そもそもの「生まれによる差別」は厳然として残ります。「男女平等の皇位継承」を唱える人は、この点についてどう考えているんでしょう?


もしかして「男子が天皇になれて女子がなれないのは問題だが、天皇の子しか天皇になれなくてもなんら問題はない」って思ってるの?

それ、「男子が医者になれて女子がなれないのは問題だが、医者の子しか医者になれなくてもなんら問題はない」ってのと同じですよ。

あきらかに変でしょ。


★★★


一方、もし性別だけでなく「皇位継承の際、血による差別もあってはならない」というなら、「次の天皇」を選ぶ際にはなんらか「民主的で差別のない」方法で選ぶ必要がでてきます。

たとえば国民の中から希望者が立候補して選挙で決めるとか、

もしくは希望者がセンター試験を受けて、合格者を宮内庁が面接して決めるとか・・・


でもね。ちょっと考えてみてください。

そうやって「民主的に、一切の差別なく選ばれた天皇」を国民の象徴とみなせます? そういう天皇とその家族を公費で維持することにみんな、賛成するの??


わかるでしょ。

「民主的な、差別のない方法で天皇を選ぶ」なんてことをしたら、誰もそんなものの価値を認めなくなる。つまり天皇制度自体が意義を失っちゃうんです。

「男女差別反対! 天皇は差別なく選ばれるべきだ!」という主張は、突き詰めると「天皇制は廃止すべき」にまでつながりかねないリスキーな考えなんです。


★★★


日本に限らず天皇の選ばれ方(皇位の継承方法)で大事なのは、差別がないことでも民主的であることでもありません。

私たちが「あの人が天皇陛下だ。日本の象徴だ」と無意識にも認めているのは、「過去からの選ばれ方に一貫性があるから=過去から続くルールに則って選ばれた人だから」です。

かみ砕いて言えば、「天皇の息子だから正統な天皇なのだ」ってこと。その前の天皇陛下についても、「そのもうひとつ前の天皇の息子だったから」正統な天皇だったと思えてるんです。

さらには「どこまで突き詰めてさかのぼっても、この人の父系先祖は天皇だった」という点に、今の天皇の正統性があるんです。

もし「時代に合わせて天皇の選び方もどんどん変えていきましょう!」みたいなことを気軽に始めたら、いつかどこかで「あれっ? ところでなんであの人が天皇なんだっけ? なんであの人にあんな特権を与えないといけないの?」って話になってしまう。

つまり、存在自体の正統性が失われてしまう。


ちなみにこの「みんな」は自国民だけでなく、海外の人達も同じです。

日本の天皇が世界で「日本の皇室だ。天皇陛下だ。象徴だ」と認められているのは、天皇が「民主的なプロセスに則り、一切の差別なく選ばれているから」ではなく、

「天皇になるのは誰であるべきかという継承されてきたルールに則って選ばれた人だから」です。

しかも日本はこのルールがめっちゃ昔まで遡れるため、他国の王室・皇室と比較しても高く評価されているんです。なのに一度ルールを変えてしまうと、その価値は一気に失墜してしまう。


★★★


あと、「イギリスでは女性でも君主(女王)になれるから男女平等で、日本はなれないから男女差別」みたいな意見もどうかと思います。 (注:ちなみに日本では歴史上、男系でない天皇はいませんが、女性天皇は存在してます)

イギリスだって出自、血統により皇位継承権者は厳しく制限されており、労働者階級に生まれた子はもちろん、元貴族だって関係ない血筋の子が女王になったり国王になったりはできません。日本とは単に長男か第一子かが違うだけです。

それに「第一子でないと親のタイトルを引き継げない」というのも差別ですよね。

現在の一般社会なら「第一子だけが親を継いで社長となる権利を持つ」って話にはならないでしょ。次男のほうが適性があるなら、そっちが継げばいい。

でも王位の継承はそうなってはいません。当然のように第一子に引き継がれる。昔の貴族達がそうやって爵位を引き継いできたように、英王室も昔のルールを残してる。

たとえ現代の一般社会であれば、明らかに平等ではない引き継ぎ方であっても、そこにこそ「王室や皇室の正統性」の源があるわけだから。


というわけで本日のメッセージは、

そもそも皇位や王位は「血」によって承継されるものなのだから、法の下の平等とかいいだしたら制度が成立しなくなるわけで、だから一般人の人権や平等論とは切り離して考えないとダメなのよ!

ってことです。

「医者の子じゃなければ医者になれない」は差別だけど、「天皇の子じゃなければ天皇になれない」は差別じゃないんです。それを差別だと言い出したら、天皇制は成立しない。

そして同じように「男子しか医者になれない」は差別ですが、「男子しか天皇になれない」は差別ではありません。

皇室には一般社会における「差別」の概念は適用できない。

そもそも「歴史をどこまで遡っても、変わらずずっと特定の差別を維持してきたことによって正統性が確保されてる制度」なんだから。

「差別はダメあるよ!」とか言い出したら制度自体がなくなっちゃいます。


それと!

ここで書いたのは「下記の本に書いてあること」ではなく、「下記の本を読んで、私が考えたこと」だってのもお忘れなく。

ここまで書いてきたことは下記の著者の考えではないし、私は専門家でもないので「絶対に正しい」などと言う気もありません。

ここは「私が考えたこと」を記録する日記ブログなんです。だから自由に「あたしはこう考えた!」を記録していきたい。

そして、それを読んだ人には「なるほどそうか」ではなく「オレも私もこの件について自分のアタマで考えてみたい!」と思って欲しい。


★★★


私は読んだ本についてエントリを書くとき、できるだけ「本から得た知識」をコピペ(=引用)するのではなく、その本を読んで自分が自分のアタマで考えたこと、すなわち「自分の思考の結果」を書くようにしています。

私にとっての「いい本」とは、読んだことで「多くの知識が得られた本」ではなく、「自分のアタマでいろいろ考えたくなる本」だからね。

そういう意味で下記はホントにいい本だったと思います。みなさんもぜひ読んでみて、自分なりの意見を考えてみてくださいな。

だって天皇制度がどうあるべきかは、本来、主権者である私たちが「確固たる意見や意思」を持って決めていくべきことなんだから。


そんじゃーね!

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