大がかりなリノベを経験した私がいま声を大にして言いたいのは、「リノベにしろ家を建てるにしろ、内装なんて最後の最後に考えればいい。なぜなら、それより大事なことがたくさんあるから」ってことです。
その優先順位について、建築士の方がキレイにまとめてくださったのでご紹介。
家づくりでチェックするべき重要なこと。優先順位の高い順。1耐震性、2気密断熱性、3機能やデザインなどの好み。1は命、2は健康、3は楽しみにかかわる。3の好みは数値化できないが、1と2は数値で判断ができる。耐震性は耐震等級1,2,3、断熱性はUA値とC値で家の基本性能を確認することができる。
— 筒美拓哉 (@tak_tsutsumi) 2019年5月10日
まさにそのとおりで、最初に考えるべきは「命」に関わる耐震性(もちろん耐火性も)をきちんと確保すること。
古い木造の一戸建てには今の建築基準を満たしてない家も多々あるので、リノベするならまずは耐震性をしっかり確保しましょう。
私たちはすぐ「一面、大きな窓ガラスの明るい部屋」や「柱のない広いリビング」に憧れますが、
柱を減らし、壁をガラスにしたら当然、家は「ヤワ」になります。
だからその分、きちんと他の方法で耐震性を確保しないと、万が一の時には家ごと崩れちゃう。
一戸建てをリノベするなら、それらをしっかりアドバイスしてくれる業者さんに頼まないと、できた時には「素敵なお家!」でも、地震の時には命を失いかねません。
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一方、マンションの場合は躯体の耐震性を個人で変えるのはムリなので、「いつの耐震基準で建てられたか」を調べるだけですが、室内の地震対策は個人の責任です。
特に、無防備な状態で長時間、横たわっているベッドの周りには決して割れやすいガラスを使った内装や装飾を施さないこと。
玄関に置く鏡は、しっかり貼り付けてしまうか、フェイクミラーを使うなど倒れて割れないよう工夫すること
大型の家具は作り付けて倒れないようにすること、など、リノベ時なら容易な地震対策はたくさんあります。
耐震性は「命」に関わるのだから、壁紙やキッチンのグレードなんかより遙かに優先順位が高く、
予算の割り当てにおいても、検討に使う時間のかけ方においても、最優先に考えるべきことなのです。
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耐震性の次、2番目が「気密断熱性」で、これは「健康」に関わるから 2番目だと指摘されてました。
その通り。
てか、日本の家がどんだけこの部分で遅れてるか、家を建てる、建て直す、リノベする人は、一度しっかり勉強したらいいと思います。
おそらく古い一戸建てでは、まったくなんの断熱もされてない家がまだたくさんあるんじゃないでしょうか。
本の中でも「親の家のリノベ」については一章を費やして説明していますが、「田舎の実家の一戸建ての冬がやたらと寒い」という人は、いちどこの観点からのリノベを検討されるべきと思います。
「冬になると廊下や洗面所が凍えるほど寒い」なんて家に我慢して住んでいるから、日本は溺死で死ぬ人がめちゃくちゃ多い。
注)ヒートショックでお風呂で死亡すると死因が溺死になるんですが、日本では毎年これで死ぬ人が交通事故で死ぬ人の倍以上。寒い洗面所は車より危険なんです。
一命を取り留めても後遺症が残ることも多々あり、まさに健康に関わります。
もちろん、結露がヒドいジメジメした部屋で眠るのも、体にいいわけありません。
私の場合はマンションでしたが、それでも冬になると洗面所や廊下が寒かったので、今回のリノベでは内装より「断熱と二重窓に優先的に」予算を振り向けました。
以前は冬の朝、洗面所が寒くて顔を洗うのも億劫でしたが、リノベ後は一度もそう感じることがなく、家中の温度が適切に保たれ、本当に快適な家になりました。
寒冷地や幹線沿い以外では、マンションを二重窓にする人は(日本では)多くありません。でも予算が限られているなら、そのお金は「壁を珪藻土にする」ことより、「窓を二重窓にする」ことに使うべきです。
なぜなら、珪藻土の調湿機能を「実感」できるなんて、相当に感度のいい人だけですが、二重窓の効果を「実感」できない人なんていないでしょ、っていうくらいインパクトが大きいからです。
「ファッションとしてのエコ」ではなく「科学的なエコ」にこそ、先にお金を回しましょう。
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耐震性、気密断熱性ときて、3番目が機能やデザインなど好みの部分、というのが、最初にいただいたツイートでしたが、
私はここを細分化し、ふたつに分けたいと思います。
3番目は「生活動線、収納動線の最適化」、そして4番目が「住宅設備や内装建材の好みによる選択」です。
ツイッターではなんども呟いていますが、「家が片付かないのは、住民がズボラだからではなく、収納の位置がおかしい」からです。
家から帰って脱いだ上着が、クロゼットではなくソファに置かれてしまうのは、クロゼットが玄関になく、ベッドルームにあるからでしょう。
疲れて帰ってきたのに「上着を吊すため、ソファに座る前にわざわざクロゼットまで持って行く」のは面倒ですよね。
でも玄関に上着の収納場所があったら、玄関で靴を脱ぎながら上着をかけ、その後、一直線にソファになだれ込めます。
他にも、洗濯機のすぐ側に洗濯モノを畳むスペースと、それらを収納するスペースを作る、だけで、「ソファが洗濯モノで占領される」事態は解消されます。
生活動線に合わせて収納プランを作れば、家事の生産性が一気に高まり、圧倒的に暮らしやすく、かつ、片付きやすい家になるんです。
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「開き戸をできるだけ無くす」のも大事です。
今回のリノベで、私の家には(マンションでは変更できない)玄関以外、開き戸はなくなりました。
トイレやお風呂のドアが開き戸だという家が大半だと思いますが、手にしろ足にしろ骨折でもすると、体をよけながらドアを引かないといけない開き戸は本当に不便だし、開けっ放しにできないので湿気も籠もります。
開き戸は引き戸より「おしゃれ」なモノが多く、外見優先だと開き戸になりがちですが、工夫をすれば、「おしゃれな引き戸」も可能なので、ぜひいろいろ検討してみてください。
下記はリノベ後の我が家のトイレで、本棚に見えているのが「引き戸」です。
下記は同じ引き戸の裏側の模様です。(なんちゃってアンティーク引き戸です。詳しくは新刊をご覧ください)
天井から吊るタイプの引き戸なので動きも軽やか、開口部も広く、車椅子でもラクラク通れます。
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そして最後が内装。
床材をパインの無垢材にとか、壁を珪藻土にとか、天井は躯体あわしでペイントに、とか、アイアンのドアノブとか、ミニマルな真っ白な家にアクセントウォールとか。
そういうのは、最後の最後に余った予算で存分に楽しみましょう。
耐震性や気密断熱性や暮らしやすさにお金をかけたら、内装を楽しむ予算が足りなくなるのではって?
かもしれません。だとしたら、最初は内装には予算をかけず、「またお金をためてから何年か後に」変えればいいんです。
耐震性や機密性、間取りは大規模なリノベ時に変えるのが合理的です。でも壁紙なんて後から変えるのも難しくありません。
最近は手軽にDIYできるグッズも増えているので、むしろ定期的に変えて楽しめばよいのです。
というわけで、リノベをしたり家を建てる際に、予算や思考を割り振るための優先順位は下記です。
1.耐震性+地震対策 =「命」に関わる
2.気密断熱性 =「健康」に関わる
3.生活動線にあった間取り=「暮らしやすさ」に関わる
4.内装材や住宅設備の選択=「自分らしさ」に関わる
業者さんを選ぶ際にも、こういった優先順位をしっかり理解(説明)してくれるところを選びましょう。
お客さんのリクエストだからと( or お客さんが理解してないからと)、命や健康、暮らしやすさより「キレイでおしゃれにする」ための提案しかしないリノベ会社、ハウスメーカー、工務店があったとしたら、それって「誠実さ」か「専門性」の、いずれかが欠けた会社だと思います。
中古を買ってリノベしたい方、親の実家をなんとかしなくちゃと思ってる方など、事前に読んでいただければ、きっとお役にたてるはず。
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