先日、出版した下記の本、後半では一章をまるまま使って「親の家のリノベ」を取り上げています。
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「自分は賃貸派なのでリノベは関係ない」という人も多い時代ですが、そんな中でも「親の実家がちょっと心配・・・」という方は少なくないでしょう。
老朽化して段差が多く、たこ足配線や(地震があれば)命を危なくするほど高くまで積まれた多くのモノ、冬になると凍えるほど寒いトイレや洗面室など、
お盆や年末に帰省したときだけでも不安になる方は多いはず。
とはいえ親に「家に手をいれたら?」と勧めても
「どうせ自分たちの後は誰も住まないんだから家にはお金をかけたくない」
「リフォームなんて贅沢。老後のために節約したい」となり、なかなか話が進まない。
これで思いだすのが「子供には迷惑をかけたくない」という言葉。
この言葉を口にしない親なんているのかと思うくらいよく聞く言葉ですが、私はこれを聞くたび「だったら家に手を入れるべきでしょ」と思うのです。
だってね。
「子供に迷惑をかけない」ために最も重要なことはなんだと思いますか?
答えは簡単
「健康寿命を長くすること」です。
少々の財産を残すことより、できるだけ長く、自立して暮らせる状態を保つこと。これ以上に「子供に迷惑をかけない方法」はありません。
ときどき「子供に少しでもたくさんお金を残すため、保険に入ったり相続税対策をしておきたい」という方がいらっしゃいますが、
そんなことより「介護が必要になるタイミングを遅らせること」のほうが、よほど子供への負担は減らせます。
すでに介護離職が社会問題化しつつありますが、親が自分達だけでは暮らしていけないとなれば、子供は仕事を辞めたりセーブしたりと、その生活(ひいては人生やキャリア)に大きな影響がでます。
単に「お金さえ残しておけばいい」という話ではないのです。
では「健康寿命をできる限りのばしたい」と本気で思うなら、何をすべきなのか。
こちらも答えは明確。
中高年の間に大事なのが「血管と内臓を痛めないこと」で、
高齢と言われる年代に入った後は、「ケガや疾患で体の自由を失わないこと」です。
つまり、40代、50代の間は食事と運動で生活習慣病に気をつけ、
60代を超えたら、「転倒で骨折しないこと」「体にマヒを残すことの多い脳疾患や心疾患のリスクを最小化すること」が何より大事。
この二つはけっこう違っていて、中高年期の対策は「自分で生活習慣をコントロールする」でいいのですが、
高年齢(60代以降)になると「環境リスク=家のリスクを減らす」ことが大事になります。
よく言われるように「寝たきり」になる最大の原因は転倒です。
大腿骨骨折など、転倒で寝たきりになると認知症が進む場合も多く、「子供に迷惑をかけない」なんて夢物語になってしまいます。
トイレのために夜中に急な階段を上り下りする必要があったり、洗濯モノを抱えてあちこち移動せねばならない家にそのまま住み続けながら「子供に迷惑をかけたくない」なんて言うのは、矛盾してるんです。
また、家の中に大きな温度差があると、脳や心臓に負担がかかってヒートショックで倒れ、後遺症で体にマヒが残ることも少なくありません。
こちらも、子供に迷惑をかけることになる大きな原因です。
「夫婦ふたりともまだ元気だから、どちらかの体が不自由になっても“子供には迷惑をかけず”ふたりで助け合う」と考えていらっしゃるのかもしれませんが、
よく言われるように老老介護は想像を遙かに超える大変さです。
段差のある家で、狭いトイレで、体が不自由になった妻や夫を、同じく高齢者の夫や妻が介助するのは、「介護者にとって」こそ、ものすごく負担が大きい。
不便な家で老老介護を続けると、今度は介護者側が腰を痛めたり、持病が悪化したりということが起こります。
こうして 2人が相次いで健康寿命を失うと、「子供に迷惑をかけない」なんてまさに不可能となります。
つまり、「元気なうちの高齢者のリフォーム」は本人のためではなく、第一介護者となる配偶者や、最終的にはかならず引き込まれる子供のためにこそ重要なのです。
★★★
まとめれば、本当に「子供に迷惑をかけたくない」と思うなら、定年前は生活習慣病に気をつけ、
定年後は「健康寿命をできるだけ長く維持でき、かつ、介護が必要となっても、介護者にとって負担の少ない家にしておく」ことがもっとも効果の高い対策です。
迷惑をかける子供さえいない単身者などにとっても、それは同じ。
「万が一に備えるため、できるだけお金を使いたくない」という方も多いのですが、
健康寿命をのばすためのリフォーム費用と、体が不自由になってから、何年も通院や治療、介護のためにかかる費用を比べたら、前者のほうが圧倒的に少ないはず。
「万が一」に陥るのを防いでくれる効果の高い投資をケチって、結果として大事なものを失うことのないよう、冷静に考えましょう。
もちろん食べるに困っているというなら、衣食住のうち、食が優先なのはよくわかります。
でも、オレオレ詐欺に狙われかねないほどの貯金をもちながら、危険な家に住み続けるのは「子供に迷惑をかけたくない」という意思とは対極にある非合理な判断です。
しかも本にも詳しく書きましたが、高齢化に備えたリノベには助成金がでる場合も多々あります。
「家にはもうお金をかけたくない」+「年をとっても子供には迷惑をかけたくない」と、矛盾したことをおっしゃっている親御さんには、ぜひこの本(もしくはこのブログエントリ)を紹介してあげてください。
繰り返します。
健康寿命を延ばしたいなら、
40代、50代は 生活習慣病にならないこと
60代以降は、家を安全にすること
これ以上の対策はありません。
そしてもうひとつ大事なこと。
それは、高齢化に備えて家をリフォームするのは、「本人」のためではないのだと理解すること。
本人がそうなった時、負担が一気にのしかかるパートナー(配偶者)、そして、(かならず引っ張り出される)子供のためにこそ、健康寿命を延ばすことが大事なのです。
そこんとこ、なんとか多くの方に伝わりますように。
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