処罰か、それとも更生か

「罪を犯した人は罰を受けるべきだ」

普通はそう考えますよね。

でも、たとえ罪を犯しても「処罰よりも更生プログラム」が必要と判断される場合もあるでしょう。

いろいろ議論はあるけれど、少年法はまさにそういう思想で作られた制度です。

ところで!

フランス革命時に王妃マリーアントワネットがギロチンで処刑されたことはご存知ですよね。

この例で彼女が「本当に処罰されるべきだったのか?」と考えたことはありますか?

世界中ほとんどの人が知る有名な事件ですが、

彼女を処刑するのは、本当に正しい対応だったのでしょうか?

ここで処刑に至るまでの、彼女の人生を振り返ってみましょう。

★★★

彼女はハプスブルグ家の王女としてオーストリアに生まれ、14歳で政略結婚のためにフランスに送られました。

14歳ですよ!

オーストリアにとってフランスは外国。

近くじゃんと思うかもしれませんが、飛行機も特急電車もない時代です。数時間で移動できるような距離ではありません。

フランス語は学んでいたでしょうが、14歳のマリーアントワネットにとって、もちろんそれは外国語です。


お子さんをお持ちの方は、自分の子供になぞらえて考えてみてください。

14歳の我が子を外国に嫁がせるって、どーですか?

たとえそれが、当時の貴族の慣習であったとしても。

もしくは、14歳の時の自分が、と考えてみてください。

14歳で、政略結婚のために、好きでもない(てかよく知らない)外国人と結婚することになり、親元を離れることになったとしたら、自分はどんな気持ちになるかと。

それがどれほど衝撃的で心細いことか、わからない人は想像力が欠如しすぎでしょう。

★★★

彼女がひとり嫁いだベルサイユ宮殿では権謀術数が渦巻き、同じく子供のような年齢で夫となったルイ16世はオタク系の性格で話も合わない。

国民が窮乏に喘ぐ中、贅沢三昧をしていたことが責められたマリーアントワネットですが、

孤独な彼女が年頃の女の子らしく、おしゃれやダンスパーティに夢中となり、王妃の財布を狙って次々とやってくる宝石屋やドレス屋から身を守れなかったことは、そんなに大きな罪でしょうか?

繰り返しましょう。
彼女は14歳で親元を離れ、外国に嫁に出されたのです。

窮乏する国民を救う義務が自分にもあるなどと、理解する機会を与えられていたでしょうか?


そしてフランス革命が起こり、彼女はギロチンで処刑されます。


さて、ここでひとつ(自分のアタマで考える)質問です。

今、あなたの目の前にふたつの選択肢があったとします。

ひとつは歴史と同じ選択肢。彼女を死刑にするという判断。

そしてもうひとつは彼女を更生施設に収容し、再教育を施すという選択肢です。

国民生活のリアルを見せ、人はみな平等なのだと教え、自分のコトは自分でできるよう、生活能力も身につけさせる。

育て直しに近いプロセスですから、10年など長い年月がかかるかもしれません。

それでもしっかり再教育を施し、心のそこから反省させ、更生させるという選択肢。


彼女に与えられるべきは、処罰なのか、更生の機会なのか。

あなたが裁判官としたら、どちらを選びますか?

★★★

マリーアントワネットだけではありません。

革命が起きると多くの場合、王族は処刑されます。

ロシア革命でも、ロマノフ王朝のニコライ二世の家族は全員が処刑されています。

銃殺や銃剣での刺殺など、ギロチンと同様の残酷な手段で、です。

しかも皇帝とその妻だけでなく、5人の子供もすべて殺されてしまいました。

一番小さな子供は13歳だったのです。


皇帝夫妻はともかく、未成年の子供たちも含め、全員を処刑する判断は正しいものだったでしょうか?

もちろん、子供を残しておくと、その子を利用して王朝復活をもくろむ勢力が出てきてしまうという懸念はわかります。

だから日本の戦国時代でも、敵側で跡継ぎになりそうな子供は軒並み殺されてしまいます。


でも純粋に「彼らに処罰されるだけの罪があったのか?」と考えたらどうでしょう?

戦国時代でも暴力革命時代でもなく、今、もし裁判を行うとして、あなたが裁判官だったら?

この13歳の子供にも死刑を言い渡しますか?

それが妥当な判断だと思いますか?


たしかに彼らも、贅沢三昧な生活をしてきた子供たちです。

王宮の外では多くの人たちが飢えに苦しんでいるのに、そんなこと気にもせず、贅沢三昧の生活を送っていた子供たちです。

でも、それは彼らの罪でしょうか?

死刑にされるほどの?

そうではなく、少年院的な更生施設に収容し、身分に関わりなくすべての人は平等であることを教え、今までの特権的な生活は多くの人の犠牲の上になりたっていたのだということを教え、更生させるべきだったとは思いませんか?

★★★

このように皇帝や王族というのは、その権力を失うときには「死刑になるもの」だと思われています。

でも実は、革命が起こったのに処刑されていないトップも歴史には存在します。

長くなったので、その話は次のエントリで書くことにしましょう。

今日はまず、上記の件について「自分の意見」を明確にしてみてください。

もしあなたが裁判官だったら、マリーアントワンネットやニコライ2世の子供たちに与えるのは処罰ですか? 

それとも更生の機会でしょうか?

こういう答のない問いは、「自分のアタマで考える」よい訓練になると思います。


 そんじゃーね