必要最小限であるべきもの

先日読んだ本の感想の続きです。消費者金融について。

闇金の金利、30%で一定額借りたら、しかも、押し貸しとかされたら・・・「一回はまったらアウト」ですよね。だったら、最初に足を踏み入れる理由は何なのか?を考えてみようと思います。最初にハマってしまう原因がつぶせたら問題が根本から改善できるかなと思って。

いったい一番最初に、いわゆる「上場会社のサラ金」からお金を借りるってのは、何が原因なのか?(最初から「闇金から借りる」って人はいないだろうと思うので。)


3つにわけて考えてみた。
(1)生死に関わるほど困って借りた。
(2)生死には関わらないけど、生活に困って借りた。
(3)生死にも関わらないし、生活にも困ってないけど、借りた。


まず(1)生死に関わるほど困って借りた。ってのは、たとえば、稼ぎ頭の人が病気や怪我、もしくはリストラや破産で失業し、同レベルの次の仕事が見つけられない場合。また、離婚や死別で働き手を失い、小さな子供がいて働けないとかもあるでしょう。

主要因は「収入が途絶える」ことですが「突発的な支出」もセットで起こる場合が多い。それに加え、「蓄えや備えがない」とか「助けてくれる頼れる身内がいない」ということもあるからお金を借りることになるのでしょう。

このうち、「収入が途絶える」「突発的な支出」は防ぎようがない。いくら気を付けていても病気や怪我はありえるし、リストラされるかもしれない。ある程度蓄えておくべきというのは簡単だけど、でも健康で働いている時から「カツカツ」で、蓄えはとても無理という収入の人も一定数います。

こういう場合、銀行はお金貸さなそう。なので彼らがサラ金に駆け込まなくていいようにするには「社会福祉による救済」しかなさそうです。生活保護か緊急生活融資かね。

★★★

次は、(2)生死には関わらないけど、生活に困っているから借りた、という人達。

たとえば、3年ごとに車買い換えながらサラ金から借りてるとか、子供を中高一貫の私立校に通わせながら借りてるとか、飲みに行ったり風俗行ったりしつつ、借りてる、ついつい流行の洋服やバックを買ってしまいつつ借りてる、そういう人たちです。

「毎月赤字!」と言いつつ、いろいろ贅沢したり見栄をはった支出をしている。こういう人たちも結構いるだろうなって思います。


そういう場合ですね、冷たい言い方ですが本当は、

サラ金で借りる前に、子供は公立校に転校させるべきだし、家は手放すべき(売却してもローンが返せない場合、小さいアパートに引っ越して、今のを貸すとか)だよね。で、外食もやめて生活費も徹底的に削減すべき。ペットボトル飲料なんて買っちゃいけないですよ。水道のお水飲みましょう。


と、思う。簡単にお金借りちゃだめです。


ではこの(2)のケースの対策は?

例えば、サラ金で初めて借りようと思ったら最初に必ず1時間のビデオを見なくちゃいけないようにしちゃえば?しかも家族全員で。そのビデオでは「年利30%で借りると何が起こるか」ということと、「貴方の生活でここを諦めればこれだけ支出は抑えられますよ」っていう方法論の紹介をする。

最近、煙草もパッケージにこわーい警告文が書いてあるじゃない?あれと同じようにサラ金も「警告ビデオ」見ないと借りられないようにしちゃえばいい。最近煙草のCMってテレビであまり見ないです。多分昼間は禁止されてるんだと思う。サラ金も自主規制ではなく、テレビCMは規制すべきだと思うです。


予防教育も大事ですよね。そもそも「夫の収入が6割になったら払えない額」の住宅ローンを組むべきではないと思う。これは不動産会社や銀行も問題。あんなめいっぱいなローン組ませてマンション買わせて、無茶です。何か一つでも不幸があったら払えないような額のローンって変でしょ。そういうこと、ちゃんと教えるべきだ。高校くらいで。

★★★

さて、(3)。困ってないのに借りる人?

そんな人いないと思います?いるんですよね。まずは「借りる方が得」と思ってる人がいます。

よく言われるのは「夜中に銀行でお金おろすと、ATM手数料が210円かかるけど、サラ金で借りてすぐに返すと100円の利子で済む」という話。最近のサラ金には「最初の1週間無利子」ってのもあり、すごく得だという人が言う。でも「上手に使えばサラ金のほうが得く」というのは、結構「はめられてる」よね。このあたり教育問題です。

もうひとつ。「毎月少しずつ貯めてから買う」のと「買ってから、毎月少しずつ返す」というのが「同じ」だと思ってる人もいる。う〜〜〜む。「それは全然違うことなのよ!」と誰が教えればいいのか。

それとキャッシュフローの問題と損益計算書の問題が区別できてない人がいる。「1週間後が給料日なのだが、今日飲みにいくお金がないので、“とりあえず”借りる」という人だ。これを「キャッシュフローの問題だ」と思っている人がいる。「今日はないが、1週間後にはあるのだから」「単なるつなぎ融資」みたいに思ってる人がいる。

ちがうってば。あなたがこの1ヶ月で使う額は、給与以上になってるじゃん!それはキャッシュフローの問題ではありません。つなぎ融資ではありません。収入以上使ってる、という問題だ。ってことを誰が教えればいいのだろう?


こういうケースでは予防のための教育はもちろん大事だが、消費者金融に関してマーケティング的な営業手法を一切禁止する必要があるのではないかと思う。最初の利子を無料化するとか、24時間オープンの無人貸出機とかは禁止すべきだ。

特定商品についてはローンでの販売自体を禁止すべきだ。着物とか布団とか英会話教材とか、ローンで買う必要はないでしょ。車も特定車種(趣味性の高いもの)に関しては、頭金を4割入れないとローンを組ませないとかいう法律にしてしまえばいい、と思う。(いろんな業界が反対しそうな意見ですね。)


まとめると、対策としては下記が必要だと思う。

(1)社会福祉(=税金)による救済
(2)予防教育&直前警告システムの法制化
(3)予防教育&営業・マーケティング手法の制限の法制化



確かに“金貸し”ってのは太古から存在する商売ではあるんです。売春と同じだとよく言われる。「どの国にも、どの時代にも」必ず存在する。

しかしながら、この商売の存在自体について「必要最小限であるべきだ」「できるだけ少ない方がよいのだ」という感覚を社会の合意として持つべき、というのが、ちきりんの結論です。

反対に言えば、サラ金を上場させた80年代の判断が最大の問題であったと思うです。上場するってのは「どんどん利益をあげる」ことを社会が求める、ということです。それはこの商売をミニマムに、という思想とは真っ向から対立する考え方を認めてしまうことであったわけです。


当時何に流されたのか、ってのはよくわかる。上の対策を本当に実施すれば「困る人たち」が沢山いる。不動産も車も売れなくなるし、バカ高い授業料の私立学校も経営が危うくなるかもしれない。

すべての人が「収入の範囲で支出する」生活に戻ったら、日本は世界第2位の経済大国ではなくなるかもしれない。

それでも「サラ金に上場させて、どんどん業界が大きな利益を出し続けることを期待する社会」ってのは変だと思う。そこからこの話はおかしくなってきたのだ、とちきりんは思っている。


そんじゃあね。