朝鮮半島の北半分で実権を握るキム家の皆さんなんですけどね、ここの3代の男性の「権力の握り方」がすごくおもしろいなあと思ったので、ちょっとまとめときます。
実はちきりんは将軍様のご長男の「正男」君が結構好きなんです。(告白!)
昔「ちきりんが今一番、お酒を一緒に飲みたい男」に選んだのは共産党の志位委員長(こちらね→http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20051002)、その後が“世界で一番セクシーな視線”だよね〜と感じたプーチン大統領(当時)。だったんだけど、今誰と一番飲みに行きたいか?と言われたら、それは間違いなくキムジョンナム氏(金正男氏)です。
こうやってみると、3人とも「共産主義系のトップ」で、これがちきりんの「好みのタイプ」なんでしょうか。ちょっと怖いです。
で、なんで正男さんに関心があるかというと、この人すごく「ぶっちゃけてる」からなんです。お父さんともおじいさんとも違うなあと。で、考えてたらこの3代の親子&その子、結構タイプが違うんだよね。
なんで、その辺、今日はまとめとくです。
★★★
一代目:金日成氏
彼はどうやって権力者になったかというと、最初は「傀儡」だったんです。アメリカのCIAがよくやる「帰国子女系」を連れて帰ってトップにたてる、ってのがあるでしょ。アフガニスタンのカルザイ氏とか韓国の最初の李承晩氏みたいな。あれのソビエト版が金日成氏ですよね。
ソビエトは朝鮮半島を共産陣営にしたかった。で、そのためには民族主義を表にたてるのがいいので、誰か朝鮮人で適当なのはいないか、と探してた。で、その頃ソビエト領内にいた抗日ゲリラとしてイキのよかった金日成に白羽の矢を立てたわけですね。
ソビエトの軍事力の後ろ盾で彼は「北朝鮮のトップにつかせてもらった」のであって、自分でのし上がったわけではない。抗日運動をやっていたことは確かだけど、すごく功績があったわけでもなく、むしろ当時彼はまだ若くて「明るく元気で単純、血気盛んな抗日ゲリラ」だった。ソビエト軍にしてみれば「傀儡として最適」だったということでしょう。扱いやすい方がいいわけですから。
というわけで、彼は北朝鮮を建国した後では自らの神格化や権力掌握に非常な才覚を発揮したのは確かなのだけど、権力者に上り詰めた方法というのは、あくまで「後ろ盾のソビエトに選んで貰った」ということだと思います。
二代目:金正日氏
二代目の彼は、カリスマである一代目から順当かつ簡単に権力を譲り受けたボンボンと思っている人もいるかもしれませんが、実はそうではありません。
この人多分、金日成氏よりも「トップになるために苦労&努力した」と思います。相当大変だった感じです。
なんたって金日成氏は「建国の父」です。抗日パルチザンとしての活動歴も実際にある。しかも様々な局面で国民とも直接ふれあっている。
だけど自分は単なる「息子」にすぎません。なんの実績もないし、隠れて生活してきたので国民と直接関わるようなポジションにもいませんでした。しかも共産国政権の世襲なんて理論的にも支持は得られない。加えて「父世代の有力者」がまだたくさん残ってて、苦労知らずの二代目ぼんぼんへの世襲を快く思っていない。
そんな超逆風の中で名実ともに「自分が正当な後継者である」ことを示すのは半端なことではなかったと思います。軍部や古い世代のリーダー達にクーデターを起こされ暗殺される恐怖感も常にもっていたことでしょう。
それを乗り越えるために彼は、父親の死の前後15年程度もの間、相当におどろおどろしい権力闘争を繰り広げ、危ない敵はすべて罠にかけて追い落とすなどして実権を握っています。ソビエト政府に押し上げて貰って一足飛びにトップに立った父とは異なり、長期間にわたって警戒感を怠らず、陰鬱に巧妙に仕組んでようやく政権を掌握したのです。
で、三代目:金正男氏
この人ぶっちゃけてますよね。母親が亡命して死亡してたり、本人も海外が長いからでしょうけど、全く北朝鮮の洗脳の世界にいる人とは違います。資本主義国の人ほどではないにせよ、北京の人よりも自由な感じがします。
そもそも北京やマカオなんかでは普通に歩いてて記者に囲まれたりしてますからね。言うことも「いやいや僕の立場でそんなこと言えるわけないでしょ。勘弁してくださいよ」的なコメントだったり。カリスマ性は全然ないけど、「普通のおっちゃん感」には溢れた人です。
特権を利用して海外をあちこち贅沢に遊びまわりながら、立場を利用して適当に商売して儲けてみる。そんな今の生活が一番だと思ってるようです。もちろん彼は別に北朝鮮のトップになりたがってるわけでもありません。むしろ嫌がってる感じ。
が、だからこそ、この人がなるんじゃないの?とちきりんは希望的に予測してます。
そして、そしたら、そう。北朝鮮が変わるかも!です。
前に、「北朝鮮はそんな簡単に崩壊しないよ」と書きました。理由は「誰もそんなこと望んでないから」でした。こちらのエントリです→http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20050512
上記エントリにも書きましたが、実は正男をトップに据えるのを「望んでる」とまではいわないけど、「望んでもおかしくない」関係者がいます。それが中国です。
中国は、北朝鮮が自分の国みたいな国、になってくれることを望んでいるのです。決してアメリカ側につかず、つまり共産党独裁のまま、でも、あんまり問題を起こさず、支援要請ばっかりしてくる国ではなく、ある程度経済的にも自立して、みたいな。そういう国になってほしいと思っているわけです。
つまり自分達がやってきた“開放政策”を忠実に真似てくれる指導者がいい。とすると、この正男氏はまさに適任です。
金正日氏の健康は誰が見ても苦しい感じです。中国は今、真剣に「北朝鮮の次期政権への移行シナリオ」を検討していることでしょう。数人しかいない息子達の中でベストなのは、“北朝鮮の外の世界”を知っていて「開放政策」を支持する現実的なリーダーです。
正男、ぴったりじゃん!!
と、ちきりんは思うけど、
胡錦涛主席がそう思うかは、よくわかんない。
けどね。
期待したい。
その気もなかったのに胡錦涛氏に「お前やれよ、お前のオヤジがめちゃにした国、なんとかしなあかんやろ、俺らが支援するから。なっ!」とか言われて、「え〜、そんな面倒なことやりたあないわあ」と言いつつ、
「命の保証ないで、やらんのやったら・・」と胡錦涛ちゃんに睨んですごまれ、、
「え〜、こわ〜。んなら、しゃーないなあ・・・」
という感じになるんじゃないかと。
というわけで、キム家三代の男達!
・明るく元気で女好き、ソビエトから「傀儡ボーヤにぴったりハラショー!」と思われた“明”の金日成
・陰鬱な権謀術数に長けた“裏の帝王”タイプの二代目、“陰”の金正日。
・そして、適当に世の中を流して生きてきた“おちゃらけ”の三代目、金正男!
やっぱり“時代はおちゃらけ”の風?
ちきりんは心から楽しみにしてるよ!
そんじゃーね。