今回“政権交代がありそう”ということで選挙への関心も高まっているし、マニュフェストに関する議論や報道も多い。せっかく議論が盛り上がっているので、是非「これも話し合ってほしいな」と思うのが、選挙のあり方。
選挙制度全般について、ネット選挙から国会議員の定員削減までいろんな論点があるんだけど、その中でも「国民の代表の選び方」について一度根本的な議論をすべきなんじゃないかと。結局のところ「誰を国民の代表とすべきか」ってのが国の在り方を決めるよね〜と思うので。
まずはおさらい。現在の国会議員の選ばれ方は下記の通り。今月末には衆議院選挙が、来年の夏には参議院の選挙があります。
<衆議院>
・定数は480名、任期は4年(解散制度あり)
・小選挙区300名(各選挙区から1名選出)
・比例選挙区(拘束名簿式) 180名(全国11ブロックごと。北海道8、東北14、北関東20、東京都17、南関東22、北陸信越11、東海21、近畿29、中国11、四国6、九州21)
・重複立候補可能
<参議院>
・定数は242名(任期6年で、3年ごとに半数の121名を改選。解散はない。)
・都道府県ごとの選挙区選挙146名(半数で73名)・・(大まかな人口比割り当て。地方は大半が一人区=小選挙区状態。人口の多い都道府県は2〜5名選出の中選挙区制的な割り当て)
・比例代表96名(半数で48名)(非拘束名簿式。政党名か、候補者名簿にのっている個人名か、どちらか1つを投票)
・重複立候補不可
おおざっぱにいえば両院とも「個別選挙区と比例区の組み合わせ」で、個別選挙区については、「多くが小選挙区」です。衆院は全部小選挙区だし、参院でも大半の都道府県では定員が1名のみです。
選挙区選挙と比例選挙はどう違うか。
・選挙区選挙は「個人を選ぶ」色合いが濃いですが、比例選挙は「政党を選ぶ」という意味が大きい。
・選挙区選挙の大半が小選挙区なので、二大政党が圧倒的に有利だが、比例選挙では小政党も当選が出しやすい。
というわけで、まずは「選挙区選挙と比例選挙をどう組み合わせるべきか?」というのが「国民の代表をどう選ぶか?」という点に関する最初の判断ポイントとなります。
次に、選挙区選挙には「小選挙区か、中選挙区か」という選択があります。ひとりしか当選できない小選挙区制は、二大政党制を生みやすくなる選挙方式です。というか、小さな政党から当選者を出すのは極端に難しいです。なんせ一地域でひとりしか当選しないのだから、普通は「第一党か第二党の候補者」が当選します。一方で中選挙区制で一区の定員数が多いと小政党に有利になります。
中選挙区にして小政党にも議席を与えたい、という意見があるのは極めて自然だし理解できるのですが、一方で「小政党が乱立」すると、「常に連立政権」になって政権基盤が不安定になります。誰もリーダーシップがとれず、全部足して6で割る、みたいな政策になりがち。もしくは、自民党が圧倒的に強かった時代のように、第二党以下の勢力が多数の小政党に分散してしまい、政権交代がおこりにくい状態になってしまいます。一長一短ですよね。
また選挙区選挙では、「境界線として何を使うか?」も重要。なぜなら現在、参議院選挙区は都道府県を基礎単位と考えているので、どんなに人口(有権者数)の少ない県でも最低1名は選出できる。これが“一票の格差”を生む大きな原因になってます。
そもそも「都道府県の代表」を国会に送る必要があるのか?という点も、ひとつの判断ポイントです。国会議員は“国のために働く人”であって、必ずしも都道府県の利益代表ではないので、必ずしも都道府県ごとに人を選ぶ必要もないはずです。
次に比例選挙に関しては、衆院のような「地域ブロック」で行うか参院の「全国比例」で行うか、というポイントがあります。地域ブロックで行えば「地域の利害代表」を国会に送ることになります。
一方で「全国区の比例」もメリットとデメリットが明確な方式です。全国区で選ぶと「地域の利害」から完全に離れて、この国がどうあるべか、というような「国の在り方論」で立候補したり選出したり、ということが容易になります。たとえばカリスマリーダーが「思想」を高らかに語ることで一定の支持を集めることができるでしょう。
たとえば共産党とか社民党のように「思想的な主張」がある政党にとっては、政党名で投票も可能な方式の比例選挙が最も有利と思います。
なんだけど、一方で「全国比例区」というのは広すぎて“選挙宣伝車で回る”という選挙活動は不可能です。そうなると事実上「マス」に既に知名度のある人でないと当選しません。このためタレントや有名人が担がれやすくなります。
さらに比例選挙には重複立候補の可否や名簿の拘束・非拘束、投票を個人名、政党名のいずれとするか、議員数の割り当て方法などに、無数の詳細がありますが、細かくなりすぎるのでここでは割愛します。
★★★
というわけで、「国民の代表をどう選ぶべきと考えるか?」という質問に答えるためには、下記のサブ質問に答えていく必要があります。
(1)選挙区選挙と比例選挙のどちらにするか?(どう組み合わせるか)
(2)選挙区選挙は、小選挙区か中選挙区か
(3)選挙区選挙の単位に市町村、都道府県などの行政単位を使うか?
(4)比例選挙は、全国区にするか、地域ブロックなどにするか?(どう組み合わせるか?)
また、「衆議院と参議院」の両方について(1)から(4)を考える必要があります。両院同じ制度もありえるし、違う制度も可能です。
うーん、選挙制度の設計って複雑ですよね。詳細をのぞいて大枠だけ決める場合でも、上記くらいは考えないと話が進みません。
というわけで、とりあえずちきりんの意見。
衆議院は、
(1)選挙区選挙と比例選挙のどちらにするか?(どう組み合わせるか)→全部選挙区選挙
(2)選挙区選挙は、小選挙区か中選挙区か →全部、小選挙区
(3)選挙区選挙の単位に市町村、都道府県などの行政単位を使うか?→使わない。地域代表にしない。
(4)比例選挙は、全国区にするか、地域ブロックなどにするか?(どう組み合わせるか?)→無関係(比例選挙しない)
そして参議院は、
(1)選挙区選挙と比例選挙のどちらにするか?(どう組み合わせるか) →全部、比例選挙
(2)選挙区選挙は、小選挙区か中選挙区か →無関係
(3)選挙区選挙の単位に市町村、都道府県などの行政単位を使うか?→無関係
(4)比例選挙は、全国区にするか、地域ブロックなどにするか?(どう組み合わせるか?) →半分を全国区、半分を地域ブロック 地域ブロックの代表は必ずしも人口比の定員である必要はないと思います。
つまりちきりんとしては
「衆議院選挙では“国民が国の方向性を選ぶ選挙”ができるようにし、参議院では“少数意見と地方の意見の代表者”も取り入れるための選挙と位置づける」ってことかな。
これで衆議院は二大政党なるけど、法律を通すためには参院の少数意見の代表者達を説得する必要もある。だけど「リーダーシップ」は明確になる。
それにこの方式だと「衆議院と参議院の違い」も明確になる。参院はまさに「数の論理ではなく、多様な意見を代表する良識の府」になるわけですよ。
なお、衆議院の選挙区選挙は、常に直近の有権者数に基づき「定員が自動調整」されるように法律で決めちゃうことを提案したい。都道府県などの行政単位とか完全無視。選挙公示日の住民登録に基づいて“はてなマップ”と同じ方式で毎回選挙区の境界線を変えちゃえばいいんだよね。
たとえば人口の減った田舎では選挙区が統合され、人口の増えたエリアでは選挙区が分割される。その際、毎回、若干でも境界線を動かす。たとえば広島県は前回は岡山県とくっついてたのに、今回の選挙では山口県とくっつくとか。世襲もやりにくくなるし、いいんじゃないの?
さて、皆さんの意見はどうでしょう?
別に結論はなんでもいいんですが、「国民の代表をどう選ぶべきか」、「誰を国民の代表とすべきか」ってこと、それなりに大事そうだし興味深い話でもあるので、議論が盛り上がったらいいな、ということでちょっくら書いてみた。
そんじゃーね!