「国を開け!」、とタヒチでビール飲みながら思った。

3ヶ月前に、衝撃的ともいえる20代&30代の人口推移をグラフ化した「年功下落の時代へ!」というエントリを書きました。そのひとつ前にも同様に人口構成の変化と日本社会のありようについて書きました。


<過去エントリ>
・「年功下落の世界へ!」→ http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20110325
・「日本の将来」→ http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20110323


この、「日本の将来を規定する最も重要な要因は、人口構成の変化だよん」(大事な注→人口減少は問題ないとしても、人口“構成の変化”は大きな問題)という話は、ここ数年いろんな人が指摘しはじめており、もともとこの分野に関心があるちきりんとしては嬉しい限りです。

ただ、前エントリで紹介したベストセラー『デフレの正体』は、現状分析はそのとおりという感じなんだけど、最後に処方箋として示された案がイマイチちきりんの感覚とは合わず、「うーむ」と思ってました。

そしたら今回、タヒチの水上コテージのデッキチェアでビール片手に読んだ『2100年、人口3分の1の日本』という本の分析と提言が、ちきりんの感覚ととても近かったのでご紹介します。

これは歴史人口学者の鬼頭宏氏が書かれた本で、読み始める前はそのタイトルから「2100年とかあたしにはなんの関係もないなー」と、あまり興味が湧きませんでした。今でも「90年後に生きてる可能性はゼロ。マジでどうでもいい。」とは思いますが、本の内容はとてもおもしろかったです。


★★★


たとえば、日本は産業規模が人口増加においつかなかった戦後すぐに加え、1970年頃にもまだ人口抑制策を国策として推進していたという指摘。本の中に当時の新聞のコピーが掲載されており、そこには大きな見出しで

“人口ゼロ成長”を目指せ
子供は2人が限度

と書いてあります。この後、政府とマスコミが束になって「出生率を下げよう!」キャンペーンを行ったその結果が大成功して今の事態になってるのだ、というのは、「そうきたか!」という感じでした。


また、過去30年のあいだ「結婚した夫婦の出生行動はほとんど変わっていない」ので、出生率が下がっているのは顕著な晩婚化と非婚化が原因だ。だから今の子供手当や保育待機児童対策などは出生率をあげるには役立たない、という主張も納得。

著者によれば必要なのは「若い人の就職を支援したり、家族形成への意欲を高めることだ」とされていて、ちきりん流にいえば、政府がやるべきなのは30代未婚男女に「合コン手当」をばらまくとか、電博さんを大動員した「貧乏結婚また楽し!ぽぽぽぽーん」みたいなCMを作って大量に流すとか、そういうことだと理解できました。


さらに、ちきりんの持論である「限界集落がなくなるのはしゃーないでしょ。税金つっこんでそれに抵抗するなんて超無駄」という意見と(多分ほぼ)同じことが「過疎地からの積極的な撤退」というお上品な言葉で表現されています。「そうか、こういう言い方をすればいいんだ」と、たいへん勉強になりました。


他にも、3世帯同居が減ってきたのは親の寿命が延びたからだ。大正時代には親の老後は5年から10年しかなかった。それくらいなら同居や世話もできるけど、90才まで老後30年、同居したり世話をするのはいくら家族でも無理がある、という指摘も「たしかにね」と思わされます。

また「こんなに寿命が延びたら、永遠の愛とかありえませんよ。老後は老後で別の人とつきあう時代がくるんすよ」ということも、(本の中では、このことだとは気がつかないくらい上品な表現で)書いてあります。


100年後には日本に外国人が5000万人やってきて人口の3分の1が外人だぜ、的な指摘にいたっては「もしかしてこの著者も“混乱Lover”?」と思ったり。

「アジアの血縁関係がもっと密になるよ」とか世界の人口100億人の世界に関する考察も、思考実験としてとてもおもしろかったです。ただ、「筆者の知人である40代女性の話では、アジアの美青年と老後をすごせるのであれば、自宅を譲ってもいいと考える女性すらいるようだ。」と書いてあるのにはびっくりしました。


そんなん当たり前じゃない?


「すらいるようだ」ってか、そう思わない40代女性なんかいるのか、日本に?って思った。こういう社会の現実に疎いところが学者さんですね。


★★★


で、ここから先はマジメに書くと、一番ちきりんの考えとぴったりしたのは、「人口面で日本が大きく成長できた時期は、常に国を外部に開き、新しいモノを受け入れた時期であった。」ということが過去の歴史の分析から導き出されているという点にあります。

この本によると日本では、縄文時代からの一万年の間に4回の人口の増加期と減退期があり、今はその4回目の減退時期だと。そして、「海外から新しい技術や物産、社会制度が導入されて新しい文明システムへと転換していく時代に人口は増加している。」という指摘は、(今度はいい意味で)まさに研究者ならではの洞察だと思いました。

だって普通の人は「過去1万年に何が起こったか」なんて気にしてられないっしょ!?

我が国の国会議員なんてみんな「首相が辞めるまでの2週間から2ヶ月」にしか関心がないんですよ。そんな中で「いちまんねん」の分析してるってすごいです。


ところでこの本のポイントはあとがきにも書かれているように、現実的な未来である2050年ではなく2100年の姿を考えるのにチャレンジした点にあります。

90年先を精緻に予想するなんて現実的ではないので、そのためにかえって発想が拡がり、より大胆な提言が可能になり、ちきりんがよく言うところの「極論の妙」が楽しめる本になっているんです。

そして(これも著者の方がいわれているように)2050年はもうどうにもならないけど、2100年は変えられる可能性があるんだよ、というメッセージも前向きで(基本的に楽観的な私には)好感がもてました。


著者は「歴史人口学者」ということですが、人口の歴史について研究するというのは、こういうことなのねーと、その知見に感心しました。しかも読みやすい文章だったので、南の島でも読みおえられたというわけ。

少子化対策に取り組む国会議員も、もうちょっとこういう学者さんの思考とか研究成果を勉強すればいいのにと思います。2ヶ月先に首相が辞めるかどうかが人生の一大事な立場では、「一万年前からの日本の少子化の歴史」を自分でひもとくのは無理ですよね。

でも国会議員ひとりに月に130万円(歳費)と100万円(文書通信交通滞在費)も税金から支払われている中の0.032%、たった740円だせば歴史人口学の専門家がそれをまとめてくれたものを読めるわけですよ!(あたしは献本されたので、その740円さえ出してないんだけど。)


もう一度、書いておきましょう。変化を受け入れ、外部へと国を開くという姿勢無しに、日本の人口は増えません。

未来は変えられる!


そんじゃーねー!


★★★

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