身近な生活でプライシングの練習を!

テレビと録画機を買い換えようとネットであれこれ調べ、機種をほぼ決めして家電量販店に見に行ったら・・・

ネットとの価格差が予想以上に大きくて愕然とし、買えずに帰ってきてしまいました。

ちょっとした差ならリアル店舗で買いたいと思ってたのですが、テレビが 3.5万円差(ネットで 7万円、実店舗で 10万円強)、録画機が 6万円差(ネット 13万円、実店舗 19万円!)だったんです。合計すると 10万円近い差。


そこまでの差とは思ってなかったので、

えー!

と思わず日和ってしまったのですが、じゃあすぐに「ネットで買おっ!」となるかと言えば、そうでもありません。

ネットで買うのと、実店舗で買うのには次のような違いがあるからです。

1)ネット最安値の店はカード使用不可(振り込み、代引きなど)


2)引き渡しは玄関先(玄関からリビングなど設置場所までは購入者が運ぶ。もしくは別途依頼をし、追加料金を払う)


3)ハコから出したり、必要に応じて組み立てたり(足を付ける程度ですが)も自分でやる必要がある


4)ハコや梱包材の廃棄も、購入者が行う


5)接続と設置も自分でやる


6)古いテレビの廃棄は、リサイクル法に則って業者を選定。電話で申し込んで、別途取りに来て貰う。あまりに安い業者は不法投棄をする可能性もあるので、きちんとチェックしながら選ぶ必要あり。


=リサイクル実費(数千円)は実店舗でもかかりますが、古いテレビを引き取りに来て貰う料金は別途かかります。


さらに、引き取り時には在宅の必要があります。古いテレビの引き取り日と新しいテレビの配送日を揃えるのは、かなり難易度が高い。こちらもリビングからの運び出しには追加依頼(料金)が必要。


録画機は粗大ゴミとして引き取りを申し込み、粗大ゴミシールを買ってきて貼り、家の前まで運ぶ。


7)ネット販売業者の場合、初期不良などの対応にやや不安あり


価格差が大きく、運ぶのも簡単な録画機だけネットで買うことにした場合、テレビの価格差は 3.5万円ですから、

上記 7項目の作業がそれぞれいくらの価値を持つサービスであるか、自分でひとつずつ考え、その合計が 3.5万円より高いか低いか、と考えるのがプライシングの練習です。

「設置までやってくれる業者もあるよ!」という人は、「数多くのネット販売業者を比較し、自分に必要なサービスを提供してくれる業者を探す手間」をいくらにプライシングするのか、も考えてください。


ポイントは(新刊にも書いたように、)それぞれの作業の妥当な価値には、個人差があると理解することです。

玄関先からリビングまでテレビを運ぶなんて朝飯前という屈強な人と、あたしみたいな“か弱い女性”では、2)の認識コストが大きく異なります。

ツイッターでは「最近の 40インチのテレビは、ちょっと大きめのタブレットみたいな重さですよ!」って言ってる人がいましたが、10kgのテレビが「ちょっと大きめのタブレット」と同じ重さに思える人と私では、「運搬代として妥当」と考える価格が違うのは当たり前です。


6)の業者を探したり、引き取り日程を調整したりすることの事務コストや、古いテレビを処分する日に在宅しなくちゃいけないことのコストも、「どうせ毎日、家にいます。ヒマだし」って人と、予定ぎっしりの多忙な人では、妥当なコストが異なります。

設定や接続も、得意な人と不得意な人で価格認識が違うし、

「テレビが入ってたハコを適切な大きさにバラしてゴミ置き場に持っていき、床に散らばった段ボールカスを掃除機で吸い取る」

という作業を、1000円程度の手間と考える人もいれば、「一万円払ってでも誰かにやってほしい」と思う人もいます。


おそらく上記全部の手間代として、3.5万円の価格差を「全く問題ない」と思う人もいるでしょうし、一方、「これくらいのことで 3.5万円も安くなるなら、全く迷わずネットで買う」という人もいます。

大事なことは、「そんな手間はたいした手間ではない!」と叫ぶことではなく、「自分ならそれぞれの作業をいくらとプライシングするだろう?」と考えることです。

さらには、「それぞれの作業を最も高くプライシングする人はどんな人で、それらの人ならいくらの価格を付けるだろう?」と考えましょう。それが「市場が求める価値」です。

新刊では、マーケット感覚を身につけるための具体的な方法を 5つ挙げて説明していますが、そのひとつである「プライシング」の練習は、こういう身近なことでも行えるのです。


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★★★


そういえば先日、野口悠紀雄先生と対談した時、「アメリカの有名大学が授業をネット上に無料公開する時代に、わざわざ高いお金を出して留学することの価値は何なんでしょう?」という話題になりました。


大学(院)留学によって得られる価値を分解すると、

1)語学力の取得
2)学位の取得
3)知識やスキルの習得
4)就職市場で高い給与を得るための条件獲得
5)ネットワーク価値
6)海外在住体験ができる価値
7)学歴ロンダリング価値
8)異文化体験価値
9)その国での居住権を得るために有利になるという価値

など、いろんな価値に分かれます。


1から 9、それぞれの妥当な価値を計算して積み上げた価値の総額が、留学にかかる総経費を大きく上回っているならば、その教育投資は価値があると言えます。

そしてもちろん、上記 1から 9の価値も人によって異なるわけですから、留学が教育投資として見合うのかどうかも、人によって答えは違います。つまり、他人に聞いても答えはでないってことです。


みなさんも身近な例を使って、ぜひ、自分なりのプライシングを試してみてください。


そんじゃーね!


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