知事の経歴一覧に見る昭和の構造

新潟県の知事選で共産党推薦「原発再稼働 大反対!」の候補者、米山隆一さんが当選されました。

この方、福島の原発事故の翌年である 2012年には「原子力賛成!」「30年たったら技術は良くなる。ドラえもんも鉄腕アトムも原子力だ。もう30年かけて世界で一番安全な原子力をつくろう」と強調されたんですけど

今回、彼を推薦した共産党の機関誌、赤旗が「支離滅裂!」と断じながらそう報じてます。


主張が 180度違うので、最初は同姓同名の他人かと思ったけど、ご本人のブログでも当時は「すべての原発は再稼働すべし」と書かれてるので、やっぱ本人みたいです。

なお、上記の発言は維新の候補者だった頃のものですが、この方、その前には自民党の公認候補でもあったので、基本は原発 OK なのでしょう。


しかもこの方、東大医学部卒の医者で弁護士でハーバードの博士号という「うにイクラ中トロ丼」みたいな“てんこもり”経歴の方なので、ちょっと他の知事さんの経歴も調べてみました。

それが下記。(間違いがあったらツイッターでご指摘ください)


網掛けをしてるのは、女性知事、5期以上の長期在職、中央官庁出身者。

女性知事って小池知事を含めても 3名しかいなくて、「一億ぜんぜん総活躍できてない」感じ。

年齢は、60代の方は多いですが、70歳以上だとそこまで多くありませんでした。


でも、経歴は驚くほど偏ってます。ざっと下表をご覧くださいな。

<知事の経歴一覧>

都道府県名 知事名 生年 回数 経歴
網掛け= 女性知事 70歳以上 5期以上 中央官庁出身
北海道 高橋はるみ 昭和29年 4 通産(経産)官僚
青森県 三村申吾 昭和31年 4 編集者 町長 国会議員
岩手県 達増拓也 昭和39年 3 外務官僚
宮城県 村井嘉浩 昭和35年 3 自衛隊 県議会議員
秋田県 佐竹敬久 昭和22年 2 県庁職員 市長
山形県 吉村美栄子 昭和26年 2 リクルート 教育相談員
福島県 内堀雅雄 昭和39年 1 自治(総務)官僚
茨城県 橋本昌 昭和20年 6 自治(総務)官僚
栃木県 福田富一 昭和28年 3 県庁職員 県議会議員
群馬県 大澤正明 昭和21年 3 町議 県議会議員
埼玉県 上田清司 昭和23年 4 国会議員
千葉県 森田健作 昭和24年 2 俳優 国会議員
東京都 小池百合子 昭和27年 1 キャスター、国会議員
神奈川県 黒岩祐治 昭和29年 2 キャスター
新潟県 米山隆一 昭和42年 1 医師・弁護士
富山県 石井隆一 昭和20年 3 自治(総務)官僚
石川県 谷本正憲 昭和20年 6 自治(総務)官僚
福井県 西川一誠 昭和20年 4 自治(総務)官僚
山梨県 後藤斎 昭和32年 1 農林水産官僚
長野県 阿部守一 昭和35年 2 自治(総務)官僚
岐阜県 古田肇 昭和22年 3 通産(経産)官僚
静岡県 川勝平太 昭和23年 2 研究者 経済
愛知県 大村秀章 昭和35年 2 農林水産官僚 国会議員
三重県 鈴木英敬 昭和49年 2 通産(経産)官僚
滋賀県 三日月大造 昭和46年 1 JR(労組) 国会議員
京都府 山田啓二 昭和29年 4 自治(総務)官僚
大阪府 松井一郎 昭和39年 2 電気会社 府議会議員
兵庫県 井戸敏三 昭和20年 4 自治(総務)官僚
奈良県 荒井正吾 昭和20年 3 運輸(国土交通)官僚
和歌山県 仁坂吉伸 昭和25年 3 通産(経産)官僚
鳥取県 平井伸治 昭和36年 3 自治(総務)官僚
島根県 溝口善兵衛 昭和21年 3 大蔵(財務)官僚
岡山県 伊原木隆太 昭和41年 1 天満屋社長(創業家)
広島県 湯粼英彦 昭和40年 2 通産(経産)官僚
山口県 村岡嗣政 昭和47年 1 自治(総務)官僚
徳島県 飯泉嘉門 昭和35年 4 自治(総務)官僚
香川県 浜田恵造 昭和27年 2 大蔵(財務)官僚
愛媛県 中村時広 昭和35年 2 三菱商事 県議会議員
高知県 尾粼正直 昭和42年 3 大蔵(財務)官僚
福岡県 小川洋 昭和24年 2 通産(経産)官僚
佐賀県 山口祥義 昭和40年 1 自治(総務)官僚
長崎県 中村法道 昭和25年1 2 県庁職員
熊本県 蒲島郁夫 昭和22年 3 研究者 農業
大分県 広瀬勝貞 昭和17年 4 通産(経産)官僚
宮崎県 河野俊嗣 昭和39年 2 自治(総務)官僚
鹿児島県 三反薗訓 昭和33年 1 テレビ記者
沖縄県 翁長雄志 昭和25年 1 市議会議員 市長


めっちゃ中央官庁出身者が多いでしょ。
なんと 47都道府県中、半分を大きく超える 27道府県で官僚出身者が知事になっています。
これでも過去よりは減ってるんでしょうけど。


地方が中央官僚を知事にしたいのには合理的な理由があります。

日本の地方の県にとって最も大事なのは
・中央官庁から補助金をもらってくる
・中央官庁に頼んで高速道路や空港や新幹線の駅を県内に作ってもらう
・中央官庁に頼んで米や乳製品の自由な輸入を阻止してもらう
ことだからです。


元官僚なら補助金や予算獲得の方法もわかってるし、同期や先輩や後輩が各省庁で働いてるから、誰に頼めばいいかも完璧に把握できてる。

だから地方の知事には元官僚がメチャ多い。

特に総務省、昔の自治省は、知事や副知事を輩出するための官庁だったので、他省庁を圧倒してます。


次に多いのは、市長や市&県議会議員、国会議員、もしくは県庁職員など。

彼らも行政組織や政治(選挙)をよく理解しています。

つまり県知事になる人の大半は、最初から行政や政治に興味を持ってる人だってことです。あとは、学者が 2名。


民間企業経験者はごく限られているのですが、その中でも多いのはキャスターなどテレビに出てた人。

これは選挙の性格上、名前や顔が売れてないと(組織が完全バックアップする官僚以外は)当選できないからです。

普通の民間企業出身者はさらに少なく、リクルート、三菱商事、それに地元のデパートの創業家出身で社長だった人とか。

こういう人を知事にするということは、元官僚を知事にして霞ヶ関から予算をもらってくるのではなく、民間企業を活性化して地域再生をやろうという意識がすこしだけ芽生えてきたエリアなのかもしれません。


さて、ここからが今日の本題です。(← ここからかいっ!)、

ここのところ、知事の選ばれ方が変わってきてるんです。

ひとことで言えば、都市部でも地方でも自民党候補が知事選に勝てなくなってる。


まず東京や大阪などの都市部では、いわゆる「改革派知事」が圧倒的に強くなってきた。

橋下氏であれ小池氏であれ、既得権益にしがみつく昭和勢力と戦う姿勢を示すと、有権者から熱烈な支持が得られます。


自民党はこの都市部有権者の意識にまったく鈍感で、小池百合子氏の対抗馬として元中央官僚の増田寛也氏を候補者に立てたりする。だから勝てない。

「そういう人はね、地方でしか当選できない候補者なんですよ」って誰かが教えてあげないと。


加えてさらに深刻なのは、最近は地方でも自民党候補が負けるケースが増えてるってことです。

なんでかわかります?


自民党系の候補者は基本的には原発推進だし(少なくとも強硬な反対はできないし)、基地だってノーとは言えないからです。

だってそれが自民党の基本方針だもん。


先日、福井県の高速増殖炉もんじゅを廃止するかもと中央が言い出したら、自治省出身の福井県知事が「勝手に廃止を決めるな」と怒ってました。

原発があるからこそ得られる様々な補助金や関連雇用が無くなることを怖れたのでしょう。

でも今回の新潟県知事選を見る限り、原発で生きてると言えるほどの福井県の知事でさえ、もし「原発反対派」が野党統一候補として立候補したら、自民党は負けるかもしれないと思えてきます。


これまで地方の有権者は、地方と農業を守ってくれる自民党が大好きでした。だから自民党公認で、中央官庁に大きなパイプを持つ「元官僚」を知事に選んできたんです。

でも原発と基地に関しては、それらを覆すに足る忌避感が地方の有権者の中にあります。(数年後にはこれに憲法改正も加わるはず)


今回の新潟県知事選で負けた候補なんて、元建設(国土交通省)官僚なんですよ。
元建設官僚が新潟の県知事選で勝てないなんて、田中角栄さんも草葉の陰で驚愕されていることでしょう。


てか、今回の選挙で負けた自民党の候補者の新聞広告見て! これが自民党候補者の一番のウリなわけですよ。


こういう人が地方でさえ当選できなくなったのは、非常に興味深い動きです。
だって地方と自民党の蜜月時代が終わったら、誰が得するかわかります?


中央と対峙する知事が多くなると、中央から地方に流れるお金が減るんです。

「原発再稼働は絶対ダメです。で、ええっと・・・高速道路、延長してもらえます?」って頼みにいけないでしょ。

「原発再稼働はありえませんよ。ところで、補助金増額の件ですけど」って陳情できる?


そうなってくると・・・
今まで地方に回してたお金の出し手である東京、めっちゃ得するやん!



そんじゃーね−


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