新型コロナウイルスの感染が世界中で大拡大し大変なことになっていますが、ここんとこ私が疑問に思っていたのは、
「アメリカって今年、インフルエンザで 1万人が死んだんだよね。数年前には同じく季節性のインフルエンザで 4万人くらい死んでるよね。
それなのになぜ、数百人の死者しかでていない新型コロナにここまで大騒ぎし、欧州やカナダとの国境を閉鎖したり、NYでレストランからミュージカル、美術館まですべてを閉めたりしてるんだろ?」
ってことでした。
大騒ぎしてるのが日本だけなら「またまたー、メディアに煽られちゃって」って感じですが、
アメリカはCDC (Centers for Disease Control and Prevention、疾病予防管理センター)やNIH(National Institutes of Health、国立衛生研究所)といった、世界をリードする専門機関を擁する国です。
こういった機関の判断のベースには、当然、科学的な知見があるはずで、「メディアに煽られて」るわけではないでしょう。
また彼らは、トランプ大統領に政治的プレッシャーをかけられたわけでもありません。
トランプ大統領はずっと「新型コロナ対策に消極的すぎる」と非難されていた側なのですから。
ではいったい、この「世界でもっとも信頼できそうな専門家集団」を擁する国は、
「毎年、季節性インフルエンザで数万人が死んでもほとんど騒ぎもしない」のに、
なぜ今回の新型コロナでは国境封鎖から街全体の封鎖まで極端とも思える対策をとっているのでしょう?
これに対する(現時点での、しかも、感染症についてド素人の)私の意見は、
「彼らが信頼する専門家の中に、今回の新型コロナウィルスは、いつもの季節性インフルエンザとは桁違いの被害をもたらす可能性がある、と警鐘を鳴らしている人がいるから」だろう、というものです。
新型コロナの死者が「数十万人、数百万人になる!」と警告する意見の中には、ほとんど根拠がなかったり、単なる素人の意見だったりという「デマ」や「フェイクニュース」に近いものがたくさんあります。
けれど中には、信頼に足る専門家や組織から出されたシュミレーションもあるんですよね。
まず、なんら感染防止作をとらなかった場合。COVID-19による死亡者数のピークは英国で6月初旬。米国は6月下旬。81%が感染し、英国では51万人、米国では220万人の死者が出ることを予想 (Fig.1)。ちなみに2018年の米国の総死者数は280万人。 2/ pic.twitter.com/iJroDO76fa
— Hironori Funabiki (@HironoriFunabi1) March 18, 2020
なぜこんなシュミレーション結果になるのか、
季節性インフルエンザとは異なり、
・ワクチンがない
・治療薬もない
・免疫を持ってる人が誰もいない
・重症化率が2割と季節性インフルエンザより高く、多大な医療キャパシティを必要とする(ため医療崩壊を起こしやすい)。
などの理由が複合的に作用して、そういう結果になってるんじゃないでしょうか。
いずれにせよ、しっかりした専門家に数十万、数百万人の死者がでるかもなどと言われたら、そりゃー大騒ぎになるでしょう
「多くても数万人しか死なない季節性インフルエンザとはワケが違う」と考えるのは当然です。
なお、新型コロナは新しいウィルスなので、専門家の中でも意見が分かれています。
でも、少なくとも一部の専門家からはこういった意見がでてきている。となれば、どの国の政府もそれを無視することはできません。
というわけで、
「世界に誇れる専門機関を擁し、科学的知見に基づき動いているはずの米国がここまで新型コロナを恐れる理由」は、
「信頼に足る専門家の中に、被害者数が季節性インフルを遙かに超え、数十倍、数百倍になる可能性がある、と言ってる人がいる」から。
さらにいえば、CDC や NIH の中にも、そういう意見をもつ専門家が存在するから。
というのが、私の推定です。
★★★
もうひとつ、各国がここまで新型コロナを怖がる理由として考えられるのは、
「感染爆発が起こり、医療崩壊が起こるまでの期間が極めて短く、かつ、そのインパクトが季節性インフルとは全く違う」と証明してしまっている実例が現れているから、でしょう。
具体的にいえば、最初が武漢、そして今の(北)イタリアです。
イタリアの新型コロナの死亡者数は、2020.3.19日時点で約 3400人です。
イタリアの通常の死亡者数が何人なのかわからないので、日本の数字から推定してみましょう。
日本では、昨年の死亡者数は 137万です。これは老衰とかガンとか心疾患とか自殺とか、全部あわせて昨年一年間でなくなった日本人の数です。
イタリアの人口は 6千万人くらいで日本の半分ほどです。高齢化も日本同様、進んでいる国なので、人口比での死亡数が同じだとすれば、年間の死亡者数は 67万人ほどと推定できます。
これを月ベースになおすと、一ヶ月の死亡者数は 5.6万人くらい、2週間だとその半分で 2.8万人となります。
でね。
さきほど書いたように、イタリアの新型コロナの死亡者が 3400人なんですが、これってたかだか過去2週間くらいの死亡者数なんです。
ってことは、少なくともこの 2週間ほどの間、イタリアでは「新型コロナのせいで、通常より 12%も死ぬ人が増えている」ということです。
これはさすがにヤバいでしょ?
しかもイタリアの医療崩壊ぶりは半端じゃありません。
人工呼吸器が足りず「どの患者に人工呼吸器をつけるべきか」という究極のトリアージが行われ、医者が足りないから医学部生を(医師免許を免除し!)臨時に医療現場に送り込むとか言い出してます。
感染が拡大しはじめると、「たかだか一ヶ月弱で」
・人工呼吸器をどの患者につけるべきかという命の選択が必要になり、
・医者がたりなくて医学部生まで現場にかり出す必要がでてきて、
・例年より 1割も死亡者数が増えてしまう、
こんなことは、季節性インフルエンザでは、過去にどの国でも起こったことがありません。
毎年毎年、あらゆる国で季節性インフルエンザは流行しています。
でも、こういう事態が起こったのは、今回が(ずっと昔のスペイン風邪とかは別として)初めてですよね。
なんでこんなことが起こるのかは私にはわかりません。
けど、
・感染力が、季節性インフルより ”ちょっとだけ” 高い
・重症化率が、季節性インフルより ”ちょっとだけ” 高い
・治療にかかる期間が、季節性インフルより ”ちょっとだけ” 長い
といった複数の要因が重なり、
結果として想定より遙かに大きな医療キャパシティが必要となって、「季節性インフルでは考えられないような事態」を引き起こしている、のかもしれません。
中国の武漢だけなら、世界は「まっ、中国だしね」とも思えます。
でも、北イタリア(イタリアは北のほうが南より、いろんな意味でレベルが高い)でも同様のパニック&医療崩壊が起こってしまったから、
「こりゃやばい! うちの国でも同じことが起こるかも!」
「新型コロナと、季節性インフルエンザはまったく違う!」
と、各国は判断したんじゃないでしょうか。
★★★
以上、まとめると、
「新型コロナは季節性インフルエンザより怖いのか? それほど警戒する必要があるのか?」
という問題にたいする(現時点での、完全に素人の)あたしの結論は、
「季節性インフルエンザとはまったく違う。それらとは異なる警戒が必要だ」であり、
その理由は、上記に書いたように、
1)CDCやNIHの専門家の中にも、季節性インフルとは桁違いの被害者が出かねない! とシミュレーションしてる人がいる(っぽい)
+
2)武漢、そしてイタリアという、「現実に、季節性インフルでは起こらなかった悲惨な状況に、たった数週間で陥った都市が目の前にある」
から、のふたつだと思ってます。
以上、なんども書きますが、これは「完全に素人」で「自分のアタマで考えることしかできない」あたしの意見に過ぎませんので、そこんとこよろしく!