日本は少子化がすごい勢いで進んでいます。
今 35才くらいの人が団塊ジュニアのピーク一で、一学年の数が200万人を超えています。
人数が多い上に、就職時に不況に見舞われた「不幸の世代」です。
今の 18才人口はすでに 130万人程度。200万人から 130万人に減るって、減少率を計算するとすごいことです。
じゃあ学校はそんだけ減ったか?というと、全く減ってません。
東大京大をはじめとして国立大でさえ全然減ってない。私立なんて定員の総合計は増えてます。
しかも今でも新聞とかで宣伝を見ます。来年の4月から「新学部創設!!」「新学科登場!」など・・・
なんか、変じゃない?
って普通思うよね。これだけ市場が減少してるのに、なんで供給が増えるねんと。
★★★
公立が中心の義務教育ならわかる。そもそも赤字という概念もないからね。
ところが実際には、公立の小学校などが人口減少に併せて減っているのに、私立の大学の入学定員が全然減らないのです。
どうしてもやっていけなくなったところが倒産するのが年に数校あるくらい。
大学は 18才人口が減っても困らないか?というと、そんなことはなくて、どこも“死にそう”に大変そうです。
早稲田や慶應というような一流私大でさえ、生徒集めに必死です。
ちなみに、この二つの大学の「生徒集めの方法」は全然ちがってて、早稲田は広末、愛ちゃん、佑ちゃんと“色物系集客”、慶應は藤沢キャンパスとかOA入試とか“革新プログラム系集客”です。
おっと話が逸れた。
★★★
子供の数が減っているのに、なぜ大学がキャパを増やすのか?
まず大前提として「縮小できない体質がある」ということです。
大学の収入はふたつ。授業料と補助金です。
これはどちらも「学生ひとりあたり、いくら」と決まっています。だから(学生の質を保つために)学生数を減らしたら収入が減ってしまう。
一方、大学のコストはふたつ。人件費と管理費です。
これらはいずれも学生数にあまり関係がないコストです。
人件費って先生の給与とか研究費ですが、学生が2割減ったからって、2割の先生を首にするなんてできない。
また、学生が2割減ったからって、既に建設してしまった校舎の建設費や維持費を2割減らすのも無理です。
つまり、一度、一定の学生数を前提に作られた大学は、学生数を減らせない運命にあるんです。
これはどこも同じ。だから全体として、こんだけ学生が減ってるのに大学の定員は減らせない。
ちなみにこれは国立大学も同じです。
東大の定員も 18才人口が200万人時代から130万人時代にかけて、“増えて”ます。
このため東大だって昔に比べれば圧倒的に入りやすくなった。
から「特定の勉強方法で入れる」みたいな漫画が売れるようになったんです。
私は小さいお子さんを持つ親御さんに会うと、いつも言ってます。
受験系の教育にはお金をかけない方がいいと。
だってこれだけ子供が減れば、ほぼ全員、親が満足できるレベルの大学に入学できます。
めっちゃお金があるなら好きに使えばいいです。
でも、無理をしてまでお受験に大金をかける必要はない時代なんです。
おっと、また逸れた。
★★★
もうひとつの理由が、今日の書きたいトピックです。
実は先進国はどこも少子化です。
ところが、各国の大学の「18才人口減少」への対策は全然違う。
まず、日本の大学がやってること。
どこの大学も付属の中学校や高校を新設しようとしています。
場合によっては付属小学校まで作ります。
これは、「できるだけ小さい頃から子供を囲い込もう」という作戦ですね。
付属小学校→付属中学校→付属高校と進めば、友達とも別れたくない、外部大学を受験する友達が少ないから自分もやめよう、みたいになって、そのままエスカレーター式に大学に進学してくれる。
人口はどんどん減るので、小学校から“囲い込んで”しまい、受験なしで大学まで来てもらおうと。
加えて、大学ではどんどん新設の学部を増やします。
最近の大学はやたらと“総合”“社会”“政策”“情報”“国際”という名前をつけた学部を新設してます。そういう”こじゃれた”学部が無いと、附属高校の生徒でさえ外部に流出してしまいかねないから。
つまり日本の大学は
・付属の中学高校を増やし、ときには小学校まで作る。
・大学の学部をバシバシ増やす。(伝統的な法学部、経済学部、工学部だけじゃ、だめだ!と。)
という方向に走ってる。
★★★
これはこれで、ひとつの合理的な動きでしょう。
市場は小さくなる。自分が縮小することはできない。じゃあ、やるべきは“早期の囲い込み”だと。
だけどこれ、実は大学間競争のひとつの方向性にすぎません。
もうひとつの方向性は海外から学生を集めようという方法で、アメリカの大学などは、多くの大学が日本などアジアでも説明会を開いてる。
★★★
というわけで、
(1) 限られた市場を奪い合うために、できるだけ早期から囲い込む。
(2) 限られた市場の外部から顧客を得るために、外に向かって営業する。
の二つの方法があるってことです。
日本の大学はなぜ (1) なのか?
最大の理由は「母国語が英語じゃないから」?
でも実は、フランスやスイスにも海外から生徒を集客する力をもった有名校は存在する。
さらにもっといえば、中国の大学が今や(国内にもあんなにたくさん学生がいるにも関わらず)同じことをしようとしている。
日本語だから、(1)しかないのだ!!って、言ってていいのかな。
そもそも (1) の方法って、全大学がそれをやって生き残ることは無理だよね。論理的に・・・
客が減るのに(大学の学部を増やして定員=)供給を増やすなんて・・・誰か=どこかの大学が倒産しなくちゃならない。
でも、皆思ってる。「倒産するのはうちじゃない」と。そしてガンガン投資する。
「ババを引くのはおれじゃない。だからどんどん投資しろ!!」
どっかで見たな〜この風景。デジャブ感ありあり。
★★★
私が関心あるのは、この発想の選択は、どうやって分かれるのか?ってこと。
実はこれ、企業にも同じ傾向がある。
日本は少子化。ということは、学校に限らずすべての消費財・消費サービスの顧客は少なくなる、ということ。
ビール会社とかだって、これだけ人口減ってるのに、売上をのばすって大変すぎるでしょ?
歯磨き粉でも化粧品でも洋服でも同じです。200万人が 130万人に減って、どうやって売上げのばすのか。
ひとつは、全体として増えてくるシルバーを狙うという方法。
もうひとつは、少なくなったパイを独占、囲い込もうという方法。
そして、「人口の増えてるインドや中国に進出して、そっちで売ろう!」という発想。
そう。縮小する国で、必死で囲い込みをはかる企業と、伸びてる国で売りに行こうと考える企業がある。
大学と同じだよね。
とてもおもしろい。