食べることは生きること

この 4月から 40 〜 75 才の人のお腹周り計測が健康診断に取り入れられたこともあり、最近は「メタボ」という言葉をやたらと目にします。「男性の腹囲 80センチ」では、相当数の人がひっかかりそう。


さて、内臓脂肪蓄積を含めたこの“太る”という現象は、白髪や老眼とともに、加齢に伴う最もポピュラーな身体の変化のひとつです。

加齢により体はあちこち変わってきます。体力、運動能力の大半が衰えるし、消化能力(焼肉が食べたくなくなる)、呼吸器の能力、脳力等、すべて衰えはじめます。

もちろん人間の体は“鍛える”ことができるので、一定範囲で加齢に対抗することは可能だけど、最終的には誰しもこの“自然の力”に逆らうことはできません。


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若い時には「いくら食べても太らない」といった人まで含めて太り始めるのは、だいたいが 35才すぎです。個人差があるので、数年早い人遅い人はありますが、ほぼ皆このあたりで「いったんは」太り始めます。

この時期の太り方の特徴は、「何も生活を変えていないのに」太り始めるということです。

若い時に太るのには、それなりに理由があります。一人暮らしを始めたとか、就職したとか、スポーツをやめたとか、結婚したとかですね。

ところがこの時期(35才)は皆それとは違う経験をします。食べる量も今までと同じだし、運動量も昔と同じ。な・の・に、体重が増え始めるんです。


若い頃から好きに食べ、特に運動らしいこともしていない人には、「オレは太らない体質なんだ」と思ってる人がたくさんいます。でも・・それは大きな誤解です。35才あたりを境にして、今までと全く同じ生活をしていても、太り始めます。


なんでか?


体がピークアウトしたからです。人間は生まれてから右肩上がりに成長し、ピークアウトして死に向かう。体がその頂点を超えた、ということですね。

その年齢までは、生活のためのエネルギーに加え、体や脳の“成長のためのエネルギー”が必要だったのに、それがある時点で不要になる。「お前はもう成長なんてしなくていい」と神から宣告される年齢がくるんです。

すると摂取量が今までと同じでも、余分なエネルギーが発生し、それが蓄積されて太り始める。成長のためのエネルギーはもう不要で、生活するエネルギーだけを摂取すれば足りるようになる。

20代の方には全然わからない、「ふううん」なトピックかもしれません。でも、その年齢になれば絶対わかるから、覚えておいて損はないです。


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さて上記で“いったんは”太り始める、と書きました。どういうことかというと、この後は、「太るのが止まる人」と「太り続ける人」に分かれるからです。

この時点で、やばいと思って手を打つ人と、やばいやばいといいながら手を打たない人に分かれます。(ここは性差があって、女性には手を打つ人が多いです。)


この「手を打つ」という作業がまたややこしいんだよね。それは若い時の「ダイエット」とはちょっと違うんです。

若い時は「食べ過ぎて太る」のだから、食べすぎをやめればやせます。「太る」のは「食べ過ぎ」という一時的な原因から起こっているので、それをやめれば元に戻ります。

一方加齢により太り始めるのは、一時的な状態ではありません。必要なエネルギーの量自体が減りはじめたのです。

だからこの年齢で太りはじめたら「食べる量を減らし、それを今後ずっと死ぬまで減らしたままにする」という対策が必要になります。

しかも、必要エネルギーは 35才で減ってそれで終わりではなく、40才でまた減り、45才でまたもう一段減るというように・・・ピークを越えたら、死ぬまで毎年少しずつ必要なエネルギーは減っていくわけです。

つまりこの年齢からのダイエットとは「ちょっと頑張る」という話ではなく、「生活を変えていく」という長丁場の作業になるんです。


これはとても難しいです。「食べすぎをやめてやせる」という方法ではコントロールできず、「普通に食べてて太る」わけだから、「普通以下にしか食べないという努力が必要」です。

しかも必要エネルギーは“どんどん”減っていくから、食べる量もいつも以下に減らした上に、さらに毎年減らしていく必要がある。そしてそれでも「太るのがとまる」だけで、やせたりはしない。


つらい作業でしょー。


好きな甘いモノ(でも、お酒でもいいけど)、「ダイエットだから1ヶ月食べない」ことは比較的楽にできるけど、「必要エネルギーが減ったから、もう一生食べない(飲まない)」と決めるのは大きな決断です。

しかも、毎年どんどん止めなければならないものが増えていくわけで、「え〜、それじゃあ、なんのために生きてるの??」とも思う。

その上、いくら節制していても 50才とか 60才で何か病気が見つかればその時点で「○○は食べてはいけません」と言われてしまったりする。


んなあほらしい!


と思う人がいて当然です。


なので、ちきりんは必ずしも全員が太らないように「好きなモノを我慢して食べない」という生活をするべきだとは思っていません。


何をいいたいか。

35才くらいから太り始めたら、それぞれ自分で「何をどう食べて生きていきたいか」を考えるべき、ってことです。

この年齢からの体重増加は、一時的なダイエットでは解決できません。好きなモノでもカロリーが高いものは我慢するのがダイエットの王道だけど、これをやると「一生好きなものを楽しめない」という生活に入ってしまいます。

だから、そうではなく「これを食べるのは私の生き甲斐!」と思えるものと、「どうでもいいもの」にわけて考えるべきだと思うんです。


カロリーが高かろうが低かろうが、大好きなものは食べた方がいい。胃腸系の病気になって食べたいものが自由に食べられなくなった人を身近にみれば、みな同じ気持ちになると思います。我慢なんてしてる場合じゃない!と痛感します。

一方で、「どうでもいいもの」でカロリーの高いモノを食べるのは、やめたほうがいい。そういうエネルギーを受け入れる余裕は 35才以下の人しか持ち合わせていないんです。


どうでもいいものって?


たとえば、ちきりんにとっては菓子パンとかです。特に美味しいとも思わないし、食べたいとも思わない。でもびっくりするほどカロリーが高い。小腹が好いたときにお手軽なのですぐコンビニで買いそうになるのだけど、これはもうやめました。

仕事中の缶コーヒーやジュースも止めました。それらをお茶に変えても、そんなに不便でも不快でもない。でも一日で結構なカロリーです。だったらやめよう、という感じ。

一方で、銀シャリやら雑炊、豆ご飯、お餅などのご飯系や、ご飯とお酒が美味しく食べられる和風、アジア風のおかず料理の数々は、気にせず食べてます。

友達と飲みに行ったり食べにいくのも楽しいし、小豆系の甘味(粒あん系大福とか)も、これを食べずしてなんのために働く?って感じです。


もちろん、ダイエットは自分でやればいい話なので、他人が食べてるものを指して、「そんなもの体に悪い」とか「そんなの食べたら太る」とか言うべきではありません。太るもやせるも自己責任。好きにすればいいとは思います。「飲み過ぎるな」とかも同じ。大きなお世話です。

35才から太りはじめましたって時に、なにか対策をとるか、気にせず楽しく太っていくか、もし何か方策をとるとしたらどういう手をとるか、ってのは、その人の「生き方」なんだから、他人の生き方に余計な説教は不要です。


楽しく食べて、楽しく生きましょう。
美味しくものが食べられるということは、それだけでどれだけ幸せなことか、心から感謝しつつ。



そんじゃーね