数週間前の最終出社日に、豪華な花束をもらったと書きました。そういえば最初の会社を辞めた時もブーケをたくさんもらった。てか、ちきりんが花をもらうのは会社を辞める時だけです。韓国ドラマ中の女性は、財閥二世からしょっちゅう花束をもらっているというのに・・。
思い起こせば、その昔ちきりんが働いていた丸の内エリアには一定の間隔で“花屋”があり、それらの店頭風景は法人カレンダーそのものでした。新役員発表の時期には立派な胡蝶蘭の鉢が店頭を埋め尽くして壮観だったし、3月末一斉定年の会社も多いから、期末にはひときわ多数の花束が並ぶ。ボーナス支給月の6月や12月末は“寿退職”していくOLさん向けのブーケが増える、という具合。
どこもそんなに大きくはなかったけれど、今から考えるとああいうオフィス街の花屋の売上げは相当なものだったかなと思います。実際、秘書室に配属になった同期の友人は、新聞の異動欄、慶弔欄を朝イチにチェックして花や電報を送るのが日課だと言っていた。いったい年間でどれくらいの額の花を注文していたんだか。
先日もらったブーケのうち一番大きかったのは会社の有志が贈ってくれたもので、“青山花壇”というお店の花束でした。すごく豪華できれいだったのでサイトを見てみたら「当店は法人様からのご注文を原則としております」と書いてある。そうなんだー。
法人が花を贈るイベント別にお勧めのお花スタイルが載っていたり、トップページには値段別のお花の写真が載っていて、実際に注文する秘書の人向けのサイトとして特化している感じでした。
見ていて、こういう「法人向けの周辺サービスをアウトソースして請け負う会社」って急速に増えるだろうなーと思いました。
アスクルが文房具を企業に届け始めてから既に相当期間がたつけれど、法人が日常的に使用、購入する物品やサービスで、専門業者がより高い付加価値を提供できる分野はたくさんありそう。ランチ弁当デリバリーの“玉子屋さん”もいいところに目をつけてるよね。残業飯の統合出前サイトもでてきたと聞いた記憶があるし。
以前は、大企業はそういう“本業以外の周辺サービスを提供する会社”を関連会社として自社グループ内に抱えていることが多かった。弁当や残業飯を頼まなくても自社ビル内に“社員食堂”があったり、社員の出張から家族旅行の手配までしてくれる旅行会社を系列会社として抱えていたり。中には、「ゴルフコンペに必要な一切合財を提供する商事会社」がグループ内にあるというところまでありました。でもさすがの大企業も今はそんな会社を維持する体力はなくなってきてると思います。
加えて、小さな会社が事業を始めようと思った場合、そういう周辺サービスをアウトソースできる専門サービサーがあれこれ揃ってくればすごく便利になる。
法人用のお花だって大企業なら「こういう時はこういうお花を贈るのよ」と教えてくれる生き字引的なベテラン秘書の人がいたり、懇意のお花屋さんに無理をいって急な注文を受けてもらったりもできるでしょう。でも、いまだにそんな“ベテラン秘書”を抱えているのはもうほんとに超のつく大企業だけだ。
特に“法人向けお花ならお任せ”みたいな花屋が一定間隔で設置されてる感もある丸の内や大手町ならともかく、新興企業の多い渋谷周りや外資系の多い港区エリアでは、個人向けのお花屋なのか法人向けの花屋なのかさえわかりにくい。
上記で紹介した青山花壇みたいに“法人向けですよ!”と明示して、購入履歴がきちんと残せたり、元秘書の人が注文をとってくれたり、お馴染みかどうかじゃなくてサービスラインの一環として緊急依頼ができるのは、外資系や中堅企業には重宝なサービスになるんだろうと思います。
というか、伝統的な日本の大企業というのは、“周辺サービス機能も含めてすべての企業関係業務を社内に保有する”ことによって、今まで小さな企業と圧倒的なサービスレベルの差をつけてきたともいえます。
アスクルがでてくる前は大企業だけが“出入りの業者”から文具を買って、彼らにいろんな個別の注文を出していた。それ以外の会社は文房具が必要な時は、社員がわざわざ文房具屋まで買いに行ってたわけです。一般消費者と全く同じようにね。
アスクルがでてきてネットを活用するようになり、小さな企業でも文具を専門業者に直接注文できるようになり、そのうち大企業まで「アスクルの方が便利で安くて履歴も残るしいいじゃん?」と乗り換え始めた。そういう“法人向け周辺サービス”ってのは、たぶんまだまだたくさんあって、これから随時、専門特化したサービス会社がたくさんでてくるんじゃないかと思う。
社員の食事、法人向けお花サービス、文房具、イベントに必要なグッズ一式・・本業とは関係ないけど付随的に必要になる基本的なビジネスインフラが市場から自由に調達できるようになるのは、企業にとって(特にゼロから会社を立ち上げる場合や、本業に集中したいという会社にとって)、すごく便利なことなんじゃないかと思いました。
そんじゃーねー