世界を歩くと、ホントにいろいろ考える・・

今年のGWはタンザニアを2週間、旅行してきました。前半はサファリ、後半はビーチです。アフリカへの旅行は8年前にケニアに行って以来です。

8年前と今回の間に、アフリカはいろいろと変わりました。そのひとつはBOP市場の勃興です。 BOPとはBottom of the Pyramidの略で、世界の人口を経済力で分類すると、ピラミッドの一番底辺にいる人たちが「消費者」として経済世界に現れ、市場として認識されはじめた、ということを意味します。

新市場開拓に貪欲な欧米企業は、シャンプーや洗濯洗剤などを「一回分で2円」のような商品に仕立てて売り始めています。売る場所は、舗装もされていない砂埃の道に面した掘っ立て小屋。どうやって、こんなところに商品を届けるのか、物流とか在庫管理とか、先進国ビジネスの常識が通じない場所で「商売」が始まっています。



写真:インパクトのあるコカコーラの広告


そのBOP市場に関しては、今回タンザニアの諸都市を見て、「これは確かに可能性がでてきたよね」と私も感じました。

隣の国ではありますが、8年前のナイロビでは、まだ人々が一番気にしているのは「身辺の安全」でした。でも今回は、そういったピリピリ感はありません。まだまだ何もない街ですが、身辺の安全さえ確保されれば、人は消費を楽しみ始めるのだとわかります。


過去8年の変化といえば、中国のアフリカ投資(援助)も最近はよく注目されます。アフリカで大きな建物や立派な道路を見れば、「どこの援助?」と聞くのがちきりん基本の質問なのですが、今回は確かに「中国」という回答が増えていました。「あの病院はフランスの援助、こっちの学校は中国が、ああ、この道路は日本の援助で・・」といった具合です。

アフリカには資源もあるし、票もあります。票とは何かって? 政治は国際社会でも基本は票です。国連安保理のように、5つの国だけが絶対的な権限を持っている組織もあるけれど、多くの国際組織は何かを決めるのに「一国一票」で選挙をします。その際の一票は、国の経済力に無関係です。アメリカもタンザニアも同じ一票なのです。

ご存じのようにアフリカには、50以上の国があります。世界全体の国の数は200くらいなので、国際社会はいつも200票で選挙をしており、その4分の1以上がアフリカ票だということです。(ちなみに「世界100カ国を旅行した!」と言っている人と、「世界50カ国を旅行した!」と言っている人の違いは「アフリカを細かく回ったかどうか」です。)

だから日本を含め、国際選挙で票が欲しい国はせっせとアフリカに援助をします。しかもアフリカには共産主義へのアレルギーがありません。経済力と軍事力に加え、民主的な方法(選挙)でもアメリカと並ぶ力を得たいと考える中国にとって、アフリカはとても重要な地域なのです。


★★★


さてBOPマーケットは、確かに立ち上がりつつありました。短期間、街を見ただけでも「これは市場になるよね」と思える状態です。これは8年前との大きな違いであり、世界の企業が注目するのもよくわかります。

ただ、日本企業にとって意味のある市場なのかどうかは微妙なところとも思いました。日本企業が得意そうな市場にはとても見えなかったからです。


ちきりんは2年前に、このエントリを書いています。「昔と今では経済発展に必要なインフラが変わってしまった」という内容です。 → 「経済成長に必要なインフラが変わる!

今回のタンザニア旅行では、これをビビッドに感じました。街に最も溢れている企業広告は、コカコーラとボーダコムやエアテルなど携帯会社の広告でした。

コカコーラはホントにどこの国に行っても存在する、ある意味“めちゃな”企業なのですが、それに次ぐ企業が「携帯通信会社」になったのは、この10年の世界の大きな変化でしょう。(ちなみにアフリカ人のドライバーは、それらを「SIM card company」と呼んでいました。これもなかなか考えさせられる言葉です)



写真:首都ダルエスサラーム空港にて(あるのは通信会社とコカコーラ社の広告のみ)


携帯電話を使った送金システムも、実際に使われ始めていました。掘っ立て小屋のような、埃だらけのその代理店を見ながら私は、「技術はほんとに世の中を変えるよね」と思いました。

これから、世界人口70億人の大半は、「固定電話を見たことはないけれど、携帯電話はもっている」という人になります。(固定電話なんて知ってるのは、先進国の人だけです。)

同じようにこれからは、「銀行なんて見たことないけど、貯金も送金も現金の引き出しも、もちろんやってるよ」という人が大半になるかもしれません。「銀行の支店なんて見たことあるのは、先進国の人だけ」という状態は現実になりえます。

というか、日本でさえ、銀行の支店が街のあちこちにある時代がいつまで続くのか、よくわからなくなってきているのですから。



写真:BOP市場の典型的なお店。看板にある「M-PESA」は、携帯電話を使った送金等、金融サービスの名前


★★★


世界を旅すると、ほんとにいろんなことに気がつきます。それは一種のタイムトリップです。タイムマシンがなくても飛行機に乗れば、私たちは時代を超えた旅行が可能です。

誤解しないでくださいね。私は、アフリカに日本の過去を見たわけではありません。私がアフリカで見たのは、日本の未来です。



ちきりんが世界を旅しながら、考えたことをまとめた本が10日後にでます。
(追記:現在は増補版が文庫本&電子書籍として出ていますので、そちらへのリンクを紹介しておきます)

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そんじゃーね。



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