HatenaMapが意味するところ

さて先日も書いたように、はてなが始める新しい機能の大半についてその意味がわからないちきりんなのですが、ひとつおもしろいと思えたのが、はてな村勢力地図。(これは公式にはてながやっているサービスではないようです。そこがまたおもしろいのだけど・・)

これです→ http://hatenarmaps.com/view/Chikirin


本来的にはどういう目的の地図なのかわかりませんが、別の観点でこれはおもしろい。

ちきりんが理解するところ(間違ってるかも、ですが)、ブックマークがたくさんついた記事を書き手の指向ごとに(タグで判断して?)カテゴリーし、地図にした、みたいなものらしいです。

地図にはエリア名がつけられてます。ちきりんブログはたいてい“社会”というカテゴリーの境界線上あたりに存在してます。(ただしこの地図、毎日変わるものらしいので、皆さんがご覧になった今がどうなってるか不明です。)

この「“社会”というカテゴリーの境界線ぎりぎり」というポジショニングは“おちゃらけ社会派”を名乗るちきりんにはまさに正ポジション。「あたってるじゃん」と最初は思いました。

ところがよく見るとその境界線の向こうは、“software”とか“programming”・・・(繰り返しますが、変化してる地図らしいので、今は違うかも。)


これ、変じゃない?


ちきりんのブログが「ネタ」と「社会」の境界線にあれば、まさにずばり!なわけですが、どう考えてもソフトウエアだのプログラミングだの、関係ないじゃん、と思うよね。


で、ちょっとひいて地図全体をみてみると・・・
そもそも面積の半分くらいは「IT&ネット業界用語」であることに気がつくわけです。


他にもjavascript, とは別にjavaもある、windows, ruby, security, web, linux・・・また、ネット用語とは言えないにしても、ちきりんなんてほとんど見たこともないtwitter,ニコニコ動画なども。全体の半分は「ちきりんには無関係な世界のカテゴリー」なんです。


で、

これはおもしろい!


と思いました。


★★★

ちきりんはあの「無作為抽出による電話での世論調査」ってのが信じられない。だってあれ、固定電話の番号だけから抽出するんですから。過去数年に一人暮らしを始めた若者はもう固定電話なんてもってないでしょ。特定のセグメントが抜けてるのに「無作為抽出」とかやっても世間を表すことはできない。

同時に「ネット調査」も全然信じられない。もちろんネット世代に向けたサービスや商品のマーケティングをやりたいならそれでいいが、社会的なことについて問うても意味ないでしょ、と思ってた。だって、まだまだネットだって「まんべんなくすべてのプロファイルの人が使っているわけではないはず」と感じてるから。

でも、それがどの程度なのか、今までその割合を概算でも教えてくれるものは非常に少なかった。というのは、「見るだけ、読むだけ」ベースならネットの利用者は非常に増えている。老若男女のPCがネットに(しかもかなり高速のサービスで)つながっている。だからある人はいうわけ。「性別別、年代別のネット普及率を見れば、もう“調査の結果の偏りは気にしなくてもよいレベル”といえます!」って。


ほんまか?と思ってた。
どうも信じがたいと感じてた。


ちきりん的には、物理的なネット普及率はともかくとして、情報を発信したり、アンケートに答えたり、買い物したり、コミュニティ作ったり、いわゆる「ネット上で能動的に活動します」という人はまだまだ相当偏っているはず、と思ってる。

ところが何度もいうが、それがどれくらい偏っているか、はよくわからなかった。たとえばアマゾンで売れている本が、実際の紀伊国屋で売れる本とどれくらい「傾向がちがうか」っていうデータって入手できないのだもの。

だからこの地図を見た時に画期的だわ!と思った。「ああ、まだまだここまで偏ってるんだ」と一目でわかるほど、明確にその証拠が示されたわけですから。

★★★

この地図で、Rubyというカテゴリーが一定の面積を占めるには、それについて書いたブログが一定数ある、ということだけではない。その記事に一定量のブックマークがついた、ということ。

つまり、書き手だけでなく、読み手側にもそういう記事をマークしよう!という人が相当数存在していることを示している。

世の中の人の8割以上(たぶん9割?)は“ルビー”なんて宝石の名前だと思っているってのに、ね。


つまり発信者だけではなく、一定の活動量のある読み手側を含めても、まだまだネットの世界の利用者は非常に偏っている、ということをこの地図は「その規模観」を含めて明示している。その意味で、非常に役にたつ資料ですよね。

たとえば朝日新聞や日経新聞の記事や、地上派テレビの番組、本屋さんで売られている本の「カテゴリー名と各カテゴリーの割合」を同じような地図にしたら、これとはまだまだ全く違う地図ができあがりそうでしょ。


というわけで、ブログにつけられる感想やコメントも「そういう偏りのある母集団からのもの」になる。

ちきりんは先日「自営業と会社員」の適性の差を書き、自営業の人には圧倒的に高い社交性が求められるとか、彼らには神頼み的発想がある、と書いた。

しかし書き終わってから気がついた。このブログを読む人、という母集団からすると、このエントリは必ずしも納得できるものではないだろうなって。だって「IT業界の自営業の人」は、他人より社交的である必要も、神がかり的発想を持つ必要も全くない。むしろ反対の人が多いかも、と思った。自営業の人といっても、一般の自営業とIT業界だけに限った自営業では、全く適性が異なるわけだ。

このエントリは、「ちきりんがどっち側にいるか」、「ネットという世界がどの程度までその他の世界と近づいているか、もしくは距離があるか」、を端的に示してる。


ちきりんは別にネットの世界の利用者が偏っていることの是非を語っているわけではない。ただ純粋に、こういう「どの程度の偏りか」をビジュアルに表す図表って、今まで案外なかったし、おもしろいよね、と思っただけ。

願わくば既存のメディアも、こういう地図を発表すればいい。各メディアの「偏り具合」がビジュアルにわかる。それっておもしろくない?

読売新聞と朝日新聞の差とかおもしろそう。ミクシーのこの地図をつくれば、ミクシーとはてなブログの性格がどうちがうか、ビジュアルにわかる。はてなブログとアメブロやライブドアブログの差も浮かび上がらせられる。


いつか、この地図のカテゴリが一般メディアのカテゴリーと同様になるのだろうか?


「決してなりません」


なぜならそれこそが現在起こりつつある「メディアの変質」ということだから。だからちきりんは、この地図がすごくおもしろいと思えたわけ。メディアがどう変わっていくかをビジュアルに表すインジケーターみたいだなあ、と思って。


そんじゃあね。