同一労働 同一賃金

同一労働・同一賃金に関して、「街頭インタビュー」を行いました。


レポーター:「同一労働・同一賃金について、どう思いますか?」

通行人A:「同一労働同一賃金が実現していないのは、日本の大きな問題です!

正社員と非正規の社員では、同じ仕事をしていても貰える給料が全く違います。

その上、片方はボーナスもあり雇用も守られていて、年金から保険まですべての福利厚生を享受できるのです。

一方で、非正規雇用の人は賃金も上がらないし保障もない。ひどすぎます。“同一労働・同一賃金”大賛成です!!」

レポーター「熱いご意見をありがとうございます!ところでAさんのご職業は?」

通行人A(ややムッとして)「僕ですか? 自動車工場で期間工やってます。

もう 7年もね。入ったばかりの正社員よりよほどスキルはありますよ。

でもそれもあと数週間だけの話です。なんせ契約は今月末までなんでね。(ためいき)」

レポーター「なるほど、お怒りはごもっともです・・」


★★★


レポーター、ややショックを受けつつ、次の通行人の方にマイクを向ける。


レポーター:「“同一労働・同一賃金”について、どう思いますか?」

通行人B:「とんでもありませんよ。同一労働・同一賃金のおかげで僕は職を失ったんです」

レポーター:「どういうことですか?」

通行人B:「僕が勤めていた電機メーカーの工場は3年前にベトナムに工場を造りました。

そこでの人件費は日本の 10分の 1以下です。つい先月、うちの会社は僕が働いている日本の工場の閉鎖を決めました。

その理由が“ベトナムで同じ製品を組み立てるワーカーの給与は月 2万円だ。

今は“同一労働同一賃金”が常識だから、同じ仕事をしてるおまえらにも月に 2万円しか払えない。

だけど、それじゃあこの国では最低賃金以下になっちゃうから日本じゃ操業できない。ということで日本の工場を閉めることに決めた”というんです。

“同一労働・同一賃金”なんておかしな理屈です。

労働者はそれぞれ自分の生活費に応じた給与を貰うべきであって、仕事の内容が同じだからといって世界一律に給与を同じにするのは間違っていますよ!」

レポーター:「なるほど・・・お怒りはごもっともです・・」


★★★


正反対の意見に戸惑いつつ、次の人にマイクを向けるレポーター。あっ、この人、日本人じゃない。。。日本語通じるかしら?


レポーター:「ええっと、what do you think of 同一労働・同一賃金?」

通行人C:「ワタシニホンゴハナセマース」

レポーター:「よかったですー。ご意見を教えてください!」

通行人C:「同一労働・同一賃金、ワンダフルです〜。

ワタシの国では、この原則にそってチンギンがすごくあがりました〜」

レポーター:「どこの国で何の仕事をされているのですか?」

通行人C:「インドでITのシゴトをしています〜。

今は自分のカイハツ会社をケーエーしています〜。昔は自分でプログラム書いてました〜。」

レポーター:「なぜ“同一労働・同一賃金”で賃金があがったんですか?」

通行人C:「アメリカの会社は仕事を発注する時、アメリカや日本やインドの会社や、いろんな国の会社に入札させます〜。

彼らのゲンソクは同一労働・同一賃金だから、同じクオリティの仕事すれば〜、インドの会社にも同じ額を払ってくれます〜。

そんな価格で仕事がジュチュゥできたら、いっぱいいっぱい利益でます〜」

レポーター:「お〜なるほど〜。インドでは皆同じような考えですか?」

通行人C:「そうです〜。インドでは、同一労働・同一賃金とグローバリゼーションはリンクしています〜。

グローバルに同一労働に同一賃金が払われるようになったから、僕たちもお金持ちになれるです〜。

センシンコクとトジョコクの格差がなくなるのは、同一労働・同一賃金のおかげですね〜」

レポーター:「なるほど。これからも頑張ってくださいね!!」


★★★


結構いいことあるんだな〜。やっぱり大事なのかな〜、同一労働・同一賃金、と思いつつ最後の一人にインタビュー。


レポーター:「“同一労働・同一賃金”について、どう思いますか?」

通行人D:「カメラをとめてくださいっ!」

レポーター:「えっ?すみません!(がちゃん)・・・ええっと、ご意見をいただくことは可能ですか?」

通行人D:「はい。ええっと。僕は反対です。大きな声では言えないけどね」

レポーター:「なぜですか?」

通行人D:僕は正社員です。会社には僕と同じ仕事をしている契約社員がたくさんいます。

同一労働・同一賃金って、僕の給与が彼らの給与と同じになるってことなんですよね?そんなの絶対に困ります」

レポーター:「大幅に給与が下がってしまうということですね?」


通行人D:「はい。でもそれだけではないんですよ。

一昨日、ちきりんさんもブログに書いていたじゃないですか。見解の相違ってエントリを。

同一労働・同一賃金というのは、あれでいえば意見A、つまり「給与は仕事の対価である」という思想に基づく意見なんです。

「同じ成果の仕事をしていたら、給与は同じであるべきだ」というのが同一労働・同一賃金の基本です。

それは「賃金と仕事内容に関係性を持たせろ」ってことです。


でもね、考えてみてくださいよ。

20才の若者と、僕みたいに妻と子と親とローンを抱えた50才では生活に必要なお金の額が全く違います。

同じ仕事だからって同じ給与にされたんじゃ、たまりません。

給与は生活に必要な分が払われるべきです。年功序列組織には同一労働同一賃金はなじまないんですよ」

レポーター:「なるほど・・」


通行人D:「同一労働・同一賃金っていうと聞こえがいいでしょ。まるで“差別がありませんよ”というように聞こえるでしょう? だから労働者はだまされそうになっています。

だけど実際には、そんな原則を飲んだら最後、先日のエントリの意見Aの奴らの思うツボです。

それに意見Aの人の主張が通っても非正規雇用の人の給与はあがりません。

非正規雇用の人のことを心から考えているのは“意見B”の人達なんですから!


とにかく、そんな原則が達成されたら正社員も中高年も全員が、今の非正規雇用の人の給与になるだけです。

しかも何年働いても給与は全然あがらなくなります。

そんなんで喜ぶのは誰ですか?考えてみてください。喜ぶのは株主や経営者だけですよ」


レポーター:「おお、懐かしの資本家と労働者の対立構造ですね!」

通行人D:「ふん。あとは自分で考えてください。僕はこれで」

レポーター:「あっ、Dさん! Dさん!!」

あああ、逃げていっちゃった。



ところで・・

皆さんは、同一労働・同一賃金に賛成ですか?それとも反対?

それとも、

「日本国内だけの同一労働・同一賃金」に賛成?
「世界レベルでの同一労働・同一賃金」には反対だけど?



そんじゃーね。


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